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多分駄文日記 | テイルズウィーバー

TalesWeaver テイルズウィーバー ドゥルネンサ、通称$鯖に生息するミラ 壱無知 來智の贈る生産性のない、 無駄駄文なブログ
続くよどこまでも
さぁって3月も遂に終わり。





その序でに、3ヶ月に渡ってやってたプロジェクトからも抜ける。
今日で抜ける。
おさらばバイバイ。






基本的に出向ばっかりで、相手先常駐で仕事してて、今もそれ。
んで、3月末までの契約だったので、今日でここともお別れ。




しかしながら、次に参画するのは同じ勤務場所。
同じ会社にやっかいになるんだな。
プロジェクトはまったく変わって、使う言語も変わる。
言語ってのは、日本語、英語、スペイン語

とかのことじゃなくて、


プログラミング言語のこと。





今やってるのがBizっつうCRS言語とjavaっつう言語で、
次やるのがVB.NET。







ほとんど関わったことがない言語なため、新しく覚えていかないと
いけないわけで、しかも次プロジェクトは結構押し気味で忙しいという
ことがやる前からわかっている。







ここ3ヶ月でちゃんと仕事してたのは1ヶ月もないだろうというほど暇
だったため、そのツケを払うことになりそう・・・(;´ρ`)






5月からはプロジェクトは同じなんだけど勤務場所が変わって、
某文具コ○ヨの本社で働くそうな。






もうホント忙しいのは勘弁してほしいものだ。
暇すぎるのも勘弁なんだけど・・・・・・





4月から新しい環境になるって人がいっぱいいることでしょう。
その類にもれず、自分も少しだけ新しい環境になるわけで、
不安もあれば、楽しみな部分もある。







4月から進学する人や仕事に就く人、新しいことを始める人、
ワクテカしたり不安に押し潰されそうになったり、いろいろあること
と思う。


人間の持つ適応能力は良くも悪くもすごい機能で、
新しい環境で1ヶ月もやってれば、もう慣れが始まってくる。






その機能のお陰で退屈もするし、次々とステップアップしたいと
思う原動力にもなる。




勿論出来うる限り、向上心となって、スキルアップし、
自分を磨いていけるほうがいいんだけど、休みたがるのも否めないというね。





一歩踏み出すのが大変なように、歩き続けるのも大変で、
道を外れたり、立ち止まったりするかもしれない。
躓いて転んで、地面に倒れこんでしまうこともあるかもしれない。
誰も歩いたことのない足跡のない道に軌跡を刻んだり、
舗装されていない茨の道を力強く踏みしめたり。
いつも前を向いて同じ道を歩き続けてたって、つまんなくなる。
歩くのが平凡になり過ぎて、違う道をステップもしたくなる。
誰かの後ろについて、いつしか自分の背中を見て歩いてくる人も
いたり、横に並んで歩いてみたり、時には手を繋いでみたり。
誰もがみんな歩いている。
歩くのが楽しいから?歩かないといけないから?
歩いている自分が好きだから?
さまざまな想いで歩いている。
僕はきっと、歩いてることが実感出来るから歩いている。
まだまだ歩き始めたばかり。
どこまで行けるのかわからないけど、胸張って歩こう。
そして疲れたら、どっしり座って眺めてみようと思う。
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眠気眼

眠れる獅子、目を覚ます?





ここ最近めっきり狩りをしなくなってしまって、物陰に隠れては
じーと座って瞑想に耽り続けてまるで出家でもしたんじゃないかと
いうほど座禅の毎日だった。






ソロで狩る気力はおきず、だからといってPTを組もうとするわけでも
なく、経験値は増えることなく時間の経過だけは積もり積もっていって、
そんな昨日、ようやくやっと狩りをした。







レベルがもあがったヽ(´ー`)ノ









これで60歳を迎えたことになる!
ここまで来るのに苦節3ヶ月かかったという事実。





恐らく、ナヤ、ミラともに1ヶ月くらいで達成していたはず。
イン率などは落ちていないものの、やれば3ヶ月もかかって60歳に
なることが出来るという逆証明になったかなっと(イミフ






ナヤの時、60になって溜めに溜めたお金で蝶の羽を買ったこと。
ミラの時、呆気なく超えてそれでも貪欲なまでに狩りに向かったあの頃。





テチで60を向かえこのレベルの低さに愕然とすること。







しかしながらレベル上げという側面ではすでにミラにて終わりを
迎えているため、クエストやアイテム、イベントなんかに注力したい
と思って始めたわけだけど、そのためにはやっぱりレベルは必要で、
生半可な60なんて数字ではまだまだ足らない。






そんなことはいざ知らず
気ままに狩り、気ままにチャットし、気ままに過ごす日々。







春がやってくる。
暖かい風に芽吹きの息吹。
緊張と不安、期待と希望が入り混じる新しき始まり。
何を言い出したんだ、壱無知です。こんにちわ。








さぁさ、そんなこんなでレベルが2もあがって絶好調。
チームなら1時間も狩れば1くらいはあがるんだけど、
今の私には1時間狩るだけで精一杯。
昨日は無茶をして2,3時間くらい狩りしたんだろうか・・・・・・


1日6時間くらいを毎日狩りし続けてたあのころがまるでウソのよう。





一気にレベル200くらいにならないかなぁ・・・・・・







そうしたら黒色にして狩り楽しむのに!






そういや新クエストもまた追加されてたんだっけ・・・
追加しておかないと。






一向に更新されていかないクエスト一覧。
チャプをクリアしたいのに、なかなかしない実態。







そろそろやり始めようかな。
歩き出す人が多い時期だしね( ´ー`)

卒業式の思い出

卒業式のお話。




着物に身を包み艶やかで美しく、晴れの舞台にて輝くような清廉さと、
一期一会かと思わせるほどの刹那な和の美を醸し出す女性を何人か目撃
しました。



普段とは違う、その場、その時、可愛い+綺麗を併せ持つヒロイン
へと変身する、そう・・・・・・それは・・・・・・








卒業式





3月終わりといえばこれ。


別れではなく、旅立ち。


希望にあふれる前準備。


物悲しく愁う気持ちは、新生の喜びへと変わる。


それが卒業式。









時は戦国・・・・・・





いや、言い過ぎた。
とは言え数年前、今のシーズン、私の大学卒業式。

印象深いことがあると意外と思い出せるものなんだけど、
もしかしたら、前のブログ(はてなダイアリー)に書いてるんじゃないかと、
探ってみたが、卒業後から始めていたようで、書いてはなかった。






っつうことで書き起こす。
まだ始まってもないので長くなること請け合い。(〃▽〃)







さて、話は数年前にトリップして、卒業式当日。
何日だったとかは全く持って定かではなく、
3回の前期を終えた時点で、卒業に足る単位を取得していたので、
4回は1年の9割以上は休んでた記憶しかないので、いまさら卒業式って……
ほとんど実感なかったと思う。








それでも4年間、お世話になった……いあまぁお金を出して学んだ学校とも
お別れのとき。




着慣れないスーツを着込んで、何時もどおり、スクーター(原チャ)で
学校へと降り立つ。






この原チャ。

大学入学時に買ったもので、大学生活とともに同じ時間と距離を
走ってきたエルメスとは言わないまでも相棒といえる存在。







で、この原チャにて後ほど事件を巻き起こす







卒業式は滞りなく進んでいく。

学長の挨拶であったり、まぁお堅い雰囲気の、これといってサプライズも
ない淡々とした卒業式。
それほど印象には残っていない。そんなもんだ( ´ー`)





全体での卒業式が終わってから、学科別で卒業証賞を受け取る。

んでこのとき学科別で成績上位者にも賞状が貰えるんだけど、








自慢じゃないよ?



自慢では決してないんだけど
私は成績第二位!(´ー`)
・・・・・・首席ではなかった( ´_つ`)
250人中なので、大したことはないんだけど・・・・・・






そんな学部長賞を貰ったなんて自慢を交えつつ┐(´ー`)┌卒業式は終了。








仲良かったみんなと、打ち上げだぁ~っと、ボーリングに行くことに。
スーツでは動きにくかった気もするけど、その時の成績はさすがに
忘れ去ってしまってる。




何だかんだで、22時過ぎくらいまであれやこれやしてて、遂にお仕舞い。





次いつ会うかもわからない解散





原チャにのり、感慨深げな帰路を走る。









走る。









走る。









走る。










これでもかと走る









ちょっと気付く。








o(・_・= ・_・)o








あれ・・・・・・









・・・・・・・・・・・・ここどこ?









((;゚Д゚)ガクガクブルブル








普段とは違う道、普段は知らない走らない道。







これは、まさしく、








迷ったぁ~~!!!!







やっヴぁい!やっヴぁい!

右見ても、左見ても知らない、暗い、細い道へ。







やヴぁい!やヴぁい!
走れば走るほど不安が込上げてくる。






やヴぁい!!やヴぁい!!







ほんとにどこだよ、こk















ドゴッッッ!!!

             ・;∵..
            ・;∵..・;∵..
 ___________ 















・・・・・・









・・・・・・














って違う違う!

しんではない!




でも、








ひ~か~れ~た~よ~~~~!!!!!






轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた
轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた
轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた
轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた轢かれた
やヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁい
やヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁい
やヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁい
やヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁいやヴぁい





逃げよ。





いや、そんな時間はない。
ほら、車からおっさん降りてきたよ。
歩いてきたよ。





怒鳴ってるよぉぉぉ~~~~~!!!!!






怒鳴られてるよおぉ!!
もうはい、すいませんと謝り続ける。





信号のない見渡しの悪い交差点での車との接触。
お酒も飲んでないしで、非は五分五分には全然なったと思うけど、
とりあえず謝った。







もう早く過ぎ去ってほしかった。






途中何故か私だけ連絡先を書けと紙を出してきたので、
出鱈目を書いて渡す(ぁ





そして車は発進する。
ブーン。





残ったのは、横たわった原チャと、ひざがぼろぼろになって、血が滲むスーツ。
平静でない自分。









原チャをまたぐ。
エンジンをかける。
アクセルを回す。







動かない('A`)







後方の車輪がまるで常時ロック状態のように、びくとも動かない。
押してもひいても動かない。





壊れてる('A`)




後方の車輪を持ち上げながら、邪魔にならないところへ移動させる。
どうしようかと考える。
とりあえず、家に電話だと、電話をかける。
事故にあった。
ここどこかわからない。
何か住所みたいなもの書いてるところを探して連絡。
迎えに来てもらう。
スーパーにはいり、ドリンクを買う。
喉を潤す。
待つ。待つ。結構待つ。






あとできいたところによると、連絡した○○町は○○市と△△市
どちらにもあるらしくって、もう片方を探していたみたいで、
遅れたらしい。





っつうことで壮絶な事件の起こった卒業日は終わった。







結局原チャは遺品廃品。
大学4年間入学からそれこそ卒業まで一緒にした原チャ生活は終わりを迎えた。








出鱈目の個人情報を渡したからなのか、その後事故に関することは
何一つ進展も情報もなし。







ホントに悲惨な日だったよ。







というのが、苦い切ない辛い卒業式の思い出。
今ではもう笑い話。


今の価値を決めるのは、思い出を語る未来の自分




楽しい、辛い思い出。





卒業して数年。
横から迫るヘッドライトの熱を感じ、ブレーキではなく、
加速で避けようとフルスロットルに捻った手首と、全身全霊の力を
こめたこぶしの感覚を今もまだ覚えている。






忘れられないあの日の思い出は、いつまでも色褪せず、記憶とここ
記されて消えない。
















最後に書いておかないといけない予防線。
このエントリーはフィクションで駄文です。
短編公開開始

風邪が流行しているようで。


世間ではタミフルは危険だと処方を制限されたりインフルエンザの
特効薬が何か他の薬にとってかわるのか、何なのか知らないけど、
辛い状態はいち早く治って欲しいと、現代医学には期待する。








さて、そんな自分も先日、風邪をひいて、辛い思いをしたということも
然り、長編(?)小説を披露して一段落したとおもいきや、
仕事が暇で暇で仕方なく、ちょっと書き溜めようかしら……っとか
思ったり、風邪とかこの時期この瞬間だよなぁ…時期外れもいやだし
ってことで、







そんなに期間を置くことなく、またまた披露。







短編小説






普通こういうのから入るべきだよな……と思った。


量産出来るってこともないけど、比較的短い期間で書けるのでねぇ……





っつうことで、書いてみた。





今回はベタベタな展開で。







ホントに病気にはかかりたくないものだけど、
普段の生活、当たり前でありきたりなものがどれだけ有意義なことなのか
再認識出来る瞬間でもあると思う。





うん、そういう感じ。
楽しい時間、苦しい時間
***********************************
『楽しい時間、苦しい時間』
***********************************


頭が痛い。頭が重い。頭が熱い。


まるで砂漠で顔だけ出して埋まっているような、朦朧とする圧迫と
それでいて埋まり身動きが取れないことへの奥底の寒気が渾然一体
となって、頭を、顔を、喉を、腕を、背中を、足を、全身を縦横無
尽に駆け巡り、ごちゃ混ぜにされている気分。
動くことが億劫であるし、動くことが痛覚を刺激するし、動くこと
自体の気力をシャットアウトしているように思う。
目の前には灰色の石壁しか見えないが、視点があちらこちらに動く
ことはなく、一点凝視、壁の細かい凹凸を意味もなく見つめ続けて
いる。視界から飛び込んでくる情報は脳に処理される手前で、捨て
られているのだろう。何の感想も沸かない。
身体の筋肉という筋肉が硬直して、さぞかし、引き締まった魅力あ
る弾力となっているであろうが、当の私にとっては、自分の身体で
はないような感覚と、それ故の自由の利かない違和感が原因の苛立
ちとで、いっそなら腕と足を逆方向へ引っ張り伸ばして欲しいくら
いの衝動に駆られる。
頭痛には波があるといっても、中規模やらビッグウェーブが断続的
にやってきて、休まること、手加減をするということをまったくし
ない。
どう考えても、平熱を飛び越えた全身発火。緊張し、怒り震えてい
るときの比ではないほど熱を帯び、一体何度に達しているのか、知
るのも恐ろしい。
ただ、こんな町の片隅で、どことも判別を許さない家の壁に、身体
を預けて、へたり込んでいるわけには行かない。
あとどれくらいで自分の家なのであろうか。
あとどれくらい歩かないといけないのだろうか。
あとどれくらいこんな辛い時間を味わわないといけないのだろうか。
辛い、辛い、辛い、辛い、辛い。
絞り終わったレモンに滲む残り僅かな期待を振り絞るように、残る
気力を立ち上がり、歩くことに費やす。
頭をあげると、石を入れられてシャイクされているような耐え難い
苦痛が押し寄せるし、腕も足も電池という供給源を失ったような、
鈍さですこぶる動きづらい。
それでも、何とか立ち上がる。
真っ暗な道がまるで、私の現状と行き先を暗示しているように広が
り、どこまでも伸びている底知れない未知を見せられているようで
恐怖しているのは、普段よりも何段も弱気になっているからだろう……

一歩ずつ、一歩ずつ、実感の無い足で地面を踏んでいく。
早く着いて欲しいのに、速度は反比例して加速どころか、減速して
いくばかり。
ここで倒れこんだ方が楽なんじゃないか?
そんな思考回路がフリップフロップのように巡り巡るが、幾ばくか
の意志で持ち堪える。
歩いて歩いて歩いて歩き続けた。
普段なら数分で着くだろう距離を数時間もかけて歩いたような錯覚
に襲われる。
時間の体感速度は感情によって密接に大きく揺れ動く。
どうして楽しい時間を長く感じさせないんだろう。
どうして辛い時間を短く感じさせないんだろう。
そんな疑問が頭をよぎり、答えの浮かばない脳力と脱力に疑問は沈
み込んでしまう。

苦しい時間を踏みしめてようやく家に辿り着いた。

覚束無い手で鍵を回し、扉を開けると真っ暗で途方もない闇が、
ぬっと私を包み込み飲み込んだ。
芯からくる寒気に鳥肌が立つ。現実を惑わす不確かで不明瞭な暗さ
が、元から失われた正常な判断力を有無を言わさず根こそぎ奪う。
暗く、陰湿で、重圧な息苦しさ、幽暗に歪んだ漆黒、不安、恐怖、
軋み折れる情緒、ぼやけ、うつろう視界、闇、闇、闇……

そこで私の意識はもがくのをやめ、崩れ埋まった。


 *

まどろみ、虚ろに、まるで頭の中にお湯をこれでもかと一杯に詰め
込まれたような、不快な違和感の中、重たく閉ざされた目蓋をゆっ
くりと開いていく。

そこには依然として、闇が広がっていた。何も変わらない闇が。
どこまでも深く引きずり込もうと手を差し伸べている。
誰もいない部屋、押し込むようにやって来る嫌悪感と倦怠感。
いつもなら気にも留めないことが、大きく強烈に邪魔をする。
孤独が気持ちを支配する。

苦しい、辛い、痛い、熱い、重い…………寂しい……

頭の中を廻る。ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐる、ぐるぐると。

 *

いつの間にか閉じた瞳を再度開けたとき、視界に入ったものは、し
な垂れたようにポツンと目の前に落ちているタオル、その向こう側
に小さな手、そして蒼い髪が無造作にかかった小さな顔だった。

「お姉さん、大丈夫!?」

蒼い髪の女の子の清涼でありながら切迫した声が耳に届く。

「大丈夫…………」

そう口をついて出てしまったが、本当のところは頭痛、熱は多少和
らいでいるかもしれないが、微々たるもので、回復してるとはお世
辞にもいえない状況に変化はなかった。

「そっか。良かった。でもビックリしちゃったよ!ゴハン作ろうと
思って来て見たら、お姉さんが倒れてるんだもん!」

「・・・・・・」

「お姉さん……?本当に大丈夫なの?」

心配そうに覗き込む女の子――ちびが顔を近づけてくる。
そして、急に思い出し、閃いたようにパチンっと手を叩いて声をあ
げる。

「そうだっ!お姉さん!ゴハン作ったんだ!風邪とかひいた時は、
がっつりと食べたほうがいいんだよ~。栄養を摂って、早く治るよ
うに、早く元気になるように、いっぱいいっぱい食べたほうがいい
んだよ!」

「―――いらない」

ちびが居たことに動揺しているのだろうか、弱い自分を見せたくな
いのだろうか、素っ気無い言葉が勝手に吐き出される。

「食べなきゃダメだよ!絶対絶対早く治るんだからっ。食べなきゃ」

「…………」

「ね?食べよ?いろいろ作ったんだ。豚肉の野菜炒めでしょー、
オニオンスープでしょー、チーズふんだんサラダでしょー、デザー
トにイチゴもあるんだよ!」

「…………」

テーブルの上に、並べられた料理の数々が見受けられるも、食欲は
まるでなかった。食べたいなんてまるっきり思わない。
無理してまで食べたくないし、いらないものはいらない。

「……お姉さん?料理温めなおそっか?」

「…………」

無視する。
応答することすら面倒で仕方がなかった。
また頭痛がしてくる。何故かイライラしてくる。
まだ何か尋ねてきているが、完全にシャットアウトして、無視し続
けた。
熱の上昇が加速度あげて襲ってくる。頭が割れるように痛い。
苦しい。辛い。他に何も考えられない!

 *

その後も時々目が覚めたけど、うずくまるよう丸まって、腕に顔を
突っ伏したまま耐え続けた。
治らないことへの不安、何故苦しまなきゃいけないのかといった理
不尽な怒り、自分の身体の自然治癒にありたっけの念を送って、た
だただ耐える。
肺への圧迫が正常な呼吸を殺し、鼻は詰まり、息苦しさが眠りを妨
げ、悶えることしか出来ずに、時間だけが過ぎていく。
チラリとテーブルを見ると、全てが片付けられ、もうすでにそこに
は何もなかった。

 *

どれだけの時間が経ったのかは定かではなかったが、辺りは薄暗く、
空気も冷たいものであり、身体中が汗だくで冷たく気持ち悪い湿り
気が全身から漂ってくる。
近くにタオルが転がっていたので手にとって見ると、拭くどころか
びっしょりと濡れていて使えそうになかった。
熱は引いているように思えた。
あれほどガンガンに打ち鳴らしていた頭痛も止んでいる。
開放感と安堵感に包まれ、私は一度大きく伸びをした。
凝り固まって反応の鈍った筋肉一つ一つが関節から鳴る軽快な破裂
音とともに解きほぐされて行く。
ダルさや違和感は当然のように残っているが、段違いに安定してい
る。
静かに錆付いた身体を労わりながら、動き、バネを確認するように、
上半身を起こす。

――大丈夫。動けそう。

どうしても水分が欲しくなってきて、立ち上がり、水道へ赴くその
途中、ソファでぐっすりと眠りこけている蒼い髪の少女を見つけた。

――ちび。

いつからここに居たんだろう。どのくらいの時間ここに居たんだろ
う。傍らにページの折り曲がった状態で、魔術書が無造作に無作為
に捨て置かれている。おもむろに手にとって見ると、発熱時や内的
な身体異常に効果的な魔術、術名キュアについて書かれたページが
見開きで載っていた。
この子が魔術書を見ているところなんて見たことがなかった。

―――私のために?

ふと、テーブルに目線を移すと、そこには雑炊が置かれており、
メモが添えられていて、
『温めて、食べてね。早く元気になってね』
っと可愛らしい字で書かれているのが見て取れた。

突如搾取されていた理性が冷静とともに戻ってきて、思い出す。
彼女に対して、素っ気無い態度をとり、邪険に扱ったことを。
うるさいとさえ思った自分の卑劣で許しがたい感情を。
冷静な判断が出来なくなっていた?
ちびは私のことだけを考えてくれていた。
心配をしてくれていた。
苦しい思いを癒そうとしてくれた。
そんなことには目も触れず、ただ苦しく辛いあの瞬間、自分のこと
だけしか考えられず、拒絶してしまい、素直と程遠い気持ちで耐え
ているだけだったことで、ちびを傷つけたに違いなかった。
それでもちびは私のため魔術を使い、料理を作ってくれている。
風邪が治ることを心から願ってくれている。
胸が熱くなる。発熱からくるものではなかった。
熱く、込み上げる気持ちが、駆け巡り、目頭さえも熱くさせた。
張り詰めていた気が針でさされたように破裂して霧散した。
弱った心に見合わず強がった自分の愚かさと、ちびの優しさ、想い
に、ただただ涙が流れた。

 *

白く柔らかい湯気が立ち上り、温かく映える白米を見事に演出し、
梅のほのかで芳醇な香りが、唾液を生成し、食欲をそそる。
その周りには、艶やかな緑彩るホウレン草と菜の花のお浸しや、
こんがり焼き目に香ばしい匂いの鮭、零れ出さんばかりに具沢山な
味噌汁など、栄養あり消化にもよい料理がずらりと並んでいる。
目の前の雑炊にレンゲを沈ませて掬い、鼻先に触れる熱い湯気に
恐る恐る口に運びいれると、予想以上の熱さに舌をまるめ、口の中
で、転がすように、体温との同調を僅かに待って飲み込むと、熱を
帯びたまま喉を通過して、気持ち良い流れを感じ、同時に溜飲も下
がる。

「おいしい?」

湯気の向こう側、テーブルに肘をつき、あごを手に乗せ、大きな瞳
、可愛い笑顔で私に尋ねるちび。
私は率直な感想を洩らす。

「―――美味しい。本当に、美味しいよ」

実際、私は雑炊が苦手だった。しかし、食べてみると、喉越しの良
さ、そしてお米の際立つような甘さが非常に美味しく思えた。

「良かった!他のも食べて!」

柔和が増したちびは満足そうに料理の盛られた皿を私の方へ押した。

どれも美味しかった。ゴハンがこんなにも美味しいものだったなん
て、今更ながら、当たり前だから見過ごし、見逃し、感覚に慣れて
忘れていた料理への感動を、晴れやかに思い出させてくれた。


楽しく素晴らしく小さな感動の詰まった食事の時間があっと言う間
に終わり、あの苦しく永遠とも思えるほど長く辛かった時間との対
比で、帰り道で感じた疑問が再度浮き上がってきた。

「……どうして楽しい時間を長く感じさせないんだろう。
どうして……辛い時間を短く感じさせないんだろう」

疑念が声となって呟きに変わっていた。
それを聞いたちびは、何事もなく当たり前といったようにあっさり
と答える。

「楽しいが短いのは、思い出にいっぱいいっぱい詰め込められるよ
うにするため。
そして苦しいが長いのは思い出に入りきらないようにするためだよ」

「えっ、何それ……」

「そういうこと。うん。そういうこと」

笑顔で満足気に首をたてにふるちび。
論理的な理屈や思考からは程遠い突っ込みどころ満載なちびの答え。
それでも、どこか納得したくなる不思議な答え。

「そっか。それ、いいね」

二人で笑った。楽しくも短い充実した時間、だから鮮烈に、強く、
思い出に残る。
そんな時間を今も、そしてこれからも沢山、思い出に入りきらなく
なるくらい、ギュウギュウに詰め込みたい、そう思った。


                         おしまい。
2007/03/22(木) 17:04:11 | 短編小説 | Trackback(-) | Comment(-)
地球は~ひ~ろい
井の中の蛙、大海を知らず。されど・・・・・・






子供の頃は周辺一帯が認識できる行動範囲の全てだった。
市の枠は飛び越えず、町や村、その広さが子供にとっては
無限大だったに違いない。







成長するにつれて、行動範囲はぐんぐん広くなる。







高校は市を跨いだし、電車で30分はかかった。





高校がある周辺が行動エリアとして加わるものの、
自分の家と高校の間にある地域に何があって、どういった道で、
どういった町なのかなんて何も知らない。

あくまで見知った土地というのは限られるのかもしれないが、
行動するたびに、動ける利器を手に入れ、もしくは活用出来るように
なるたびに、世界は広いことを知る。








大阪?大阪なんて日本のほんのほんの一部に過ぎないんだよ







日本?日本なんて世界のほんのほんの一部に過ぎないんだよ







世界は広い。地図でなんてわからないくらい広大で雄大で壮大だ。




そして、地球






球体をした地球。



どういったものかは本であったり、テレビであったりでわかっている。
写っているのはちっぽけな青い玉だ。




でも、この地球には計り知れない密度であらゆるものが詰まっているんだ。




どれだけズームしたら見えてくるんだろう。
どれだけの倍率なんだろう。







ホントに凄いよねGoogle Earth




前置きが多少長めなのはいつものこと。
そんなこんなでGoogle Earth。



今更といったくらい随分前に流行ったもので、その頃はなんか凄いな、
そんな時代になったのかと、感嘆しつつも、実際にインストールする
ことはなかったんだけど、




ひょんな気持ちでこの間インストールしてみた。








そして知る。










すげーわ。






まぁ知らない人がいるなら、簡単に説明すると、
衛星写真を使った地球規模の模型。

で、いいかな。





本気で怖いのは、この衛星写真。




きっと技術的には、大っぴらには隠してるのか調べてもいないが、
どこまでの精度のものが今は存在しているのだろう。





いま、この地区、この場所と指定してやれば、衛星上からその様子、
人、顔に至るまで完璧に認識できるレベルの画像情報が送られてくる
ようなことになっているのだろうか。





っつか、その域に達するのなんて、ほんの数年後のことなんじゃないか。





って思うくらい、監視できる装置は着々と整っているわけだ。





GoogleEarthにいたっていえば、世界でも有名な場所なんかは、
非常に鮮明に上空からの画像が見れる。




世界に名所なんてありすぎて、どこから見ればいいのか、迷う。
そして迷ったとき、結局知っている行動範囲の中から、選ぼうとする。







まぁ、折角だから、ここ見てみよう。










google_earth.jpg






((((;゚Д゚)))アワアワアワアワアワアワ








見えるってレベルじゃねぇぞ!





怖い世の中になったものです。
それと同時に、地球を、世界を、こんなに簡単に遊べ観察出来ちゃう
文明、宇宙からの視線に、


空を仰ぎ見てしまう自分がいた。
ももも初傭兵
こんなに痛いなんて。






前回エントリーで眠気について語ったが、4時間という睡眠時間であるのに
そんな眠気あっさりと吹き飛んで、今は背中を襲う違和感に、目が冴える。







昨日椅子に座っていた体勢は確かに悪かった。



負荷をかけたことは否めない。


筋トレなんてしていたわけではもちろんなく、
ただ単に姿勢が悪くて、痛めたに過ぎないと思う。











腰が、腰が痛い(><)











おじいちゃんも真っ青。


今、まるで模範生であるかのように、中世ヨーロッパの伯爵紳士で
あるかのように、はたまた社交ダンスでも踊っているかのように、












めちゃくちゃ姿勢ぴーーーーーーーーーーんってしてる。









曲げるのがもちろん痛いからであって、猫背改善などといった、
健康志向に気を使ったわけでは決してない。







この姿勢のままこれから約8時間耐えねばならないわけだけど、
果たして耐えることが出来るのであろうか。




我が背骨の改善には効果的かもしれないが、耐えられず逆に悪化させる
恐れも孕んでいることには注意したい。







とりあえず、楽な姿勢を痛さと向き合い反応を小出しにみながら、
模索してみたいと思う。









そんな今週の平日始まりに愁う壱無知です。こんにちわ。








昨日の寝る時点で発覚したこの痛み、これから待ち受ける悲惨な腰痛
をまったくもって知る由もなかった日曜22時。








目の前に要塞ゲート




そう。テチによる初めての傭兵。
というか、そもそも傭兵自体ミラのときをあわせて2度目なくらい少ない
ので、他のクラブのさっくせんとか少し興味を持ちつつ参加。







要塞前のクラブマスターは忙しい。



1:1が画面を覆いつくし、クラチャでは概要やさっくせんを、
ずらずらと書きなぐり、良い案を吸収して軌道修正。
同じ説明を何度か繰り返し、時間は刻々と過ぎ去っていく。







そういった楽しさを思い出しながら、自分に出来ることを考えながら
いざ、出陣






出来ること。迷惑を掛けないこと。






大きくは、死んで戻らないこと。
死ぬことによって、他の人の蘇生に遅れが出てはいけないわけで、
極力死なないことを意識した。







とはいえ、我がテチの成長スピードはのろのろビームをうけたが如く
遅く、未だに58と燻った弱さであり、死なないことは至難の技。










それこそ1ターンキル必至必死。



だもんで、要塞ゲートから入ったすぐのところで、補助をかけるに
徹することに。







相手は11連勝中と、波に乗っている強豪。

門の前にびっしりと布陣を敷き、臨戦態勢。

開始から数分、門にすら行けないと訃報が。

確かに強そうだった。攻めあぐねているものの、
15分ほど経過して門を突破。そして石に行くわけだけど・・・・・・








石の周りには、これでもかと地雷地雷地雷。
凄まじい数。


呆気に取られるというよりも感嘆といったほうが正しい。





防衛回数は伊達じゃあない。


そんなこんなで防衛されてしまい、役に立てなかった私はミラで
乗り込みたい気持ちが沸々と沸いたのでした。








その後はボーとして、寝るに横になろうとしたところ、冒頭よろしく
腰が痛く、結局3時くらいまでなかなか寝れず、睡眠不足っと。







一難去ると、また一難。



困難は絶えることなく私を苦しめる。






願わくば平穏と安らぎを。
眠れる力
強さ。



強さとは何だ。



力が強いことか。



打ち負けることのない肉体か。



砕け散らない意思か。



貫ける信念か。



強さが欲しい。
自分の想いを崩さないために。
倒れることのない意識と、
揺らぐことのない確固たる力を。







眠気に負けない強さが欲しい。ZzzzzZzzzz




あまりにもやヴぁ過ぎる。

何度か書いている気がしないでもないが、眠気が半端ない
そんでその眠気にあっさり負けているこの状況。
さすがに危険視せざるおえない。





ここ最近寝るのはAM1:00~2:00の間。
一日5時間は寝てるのだが、まったく足りていないようで、
仕事中、気付けば寝てる。( ´∀`)



今日なんて9時初っ端から眠たくて、目を閉じてしまったり。
そんでお昼を食べ終わると、満足感から眠気がここぞとわっしょいわっしょい
してくるからたまったもんじゃない。


逆らえるほどの力もないために、欲求のままに、
目蓋が重力に従って落ちていく。
llllllllllllllllllllllllll






( ゚д゚)ハッ!









寝てた。





今、この瞬間、本気で10分ほど意識なかった(;・∀・)
その寝てしまってる証拠に『目蓋が~・・・』の文の下に
全角lが連打されているよ・・・・・・
まるで催眠のように寝てしまった。
やヴぁい。やヴぁすぎるよ。






まずこの最大の起因。
やることがない。
いや、実際には少しだけ仕事はあるんだけど、いつになってもやる気が
起きない。


この暇ってやつが眠気を倍、さらに倍に促してくるわけ。




ある程度の作業を下さい。






この対処方法として、カフェインや、眠気防止系のガムなどを
試してみるしかないかなぁ。
もしくは根本的にもっと睡眠時間を取るべきか。
これが最善最良。





奇しくも、早く寝ようと思えば全然寝られるので、せめて12時を境に
寝るようにしようかな。




規則正しい生活。




一番いいんだけど、なかなか難しいこと。




しかしながら、このあまりにも寝てしまってる状況は改善しなくては
いけないのだ。




眠たいときの対処法。
誰か教えてくれええええ!!!!

文明の恩恵

ヒューン。




プツン。





真っ暗。






我々はどれだけ意識せずに、常のそこにあり、当たり前となっている
もの――電気を使っているのか。



なくなって初めて気づく。




その価値を。そして人間の弱さを。







火を使うことで人間として進化の火種を手に入れ、
自らの弱さを補うべく、まわりのあらゆるものを利用し、そこから
作り出し、使い、補填している人類。




今や、生活に欠かせないものとなり、身近に居続ける電気




その電気が、一瞬のうちに断絶し、部屋は本来の黒を取り戻し、
人は見えないことに恐怖し、たじろぎ、身動きが取れなくなる。







ブレーカーが落ちました。




二度も。






エアコンを使うと何故か妙にブレーカーが落ちやすかった昨日、
部屋の電気はテレビと加湿器に限定し、PCをつけることもなく
寒さと戦い、最後は布団を被って就寝した壱無知です。

おはようございます。





そもそも今年からエアコンを使い始めてるわけで、それ以前の長い長い
歴史の中ではPCの前に一人掛けソファーに座り布団を被り、腕と顔だけを
出して、震える手でマウスとキーボードを触って、寒さとの根競べを
していたというのに、近代の利器、エアコンを手に入れてからは、軟弱に
寒さを恐れるようになっていたわけで、昨日はホントに寒かった。






っつか、ブレーカー落ちすぎだろっ!





テレビ、エアコン、加湿器、PCと電気を食い散らかしていても、
耐えられていたのに、昨日だけは、どうしたものか、全然弱って
しまっていて、すぐ落ちる落ちる。
2回も落ちたため、もうゆっくりテレビとDSだけで過ごすことに
したんだけど、うっかり要塞の申請するのを忘れていたというね!!





気付いたのは翌0時くらいだったかと。(  ̄ー ̄)





そもそも、この冬の最後の足掻きともいえる、寒さは何なんだ!




もう暖冬でいいよ!ってか冬終わってくれていいよ!
もう3月の中旬だよ!
春、スプリングですよ!
あぁ~寒い;あぁ寒い。






寒いと言えばアレだね!
親父ギャグにも負けない寒さ、ブリザード級な駄文。
終わりを向かえ一段落な小説!


壊しに壊しまくってセオリーからずれた、気持ち悪いストーリーで
ハッピーなエンドからは程遠いナニコレ感がひしひしとありありと
浮かび上がっているわけだけど、まぁあんな感じで(ぇ




素晴らしいまでの暇が出来、尚且つ、書く意欲が沸いたときには、
懲りずに破綻駄文をまた書けたらいいかなっと思っております。




あと、鬱な救済措置を少しは講じる予定。





最後あとがき風に、
この作品を書くに至り、多大なご協力を頂いた担当のむっちー様、
書かないことで読者の想像を無限に広げさせるという素晴らしい
ポリシーと試みをされたイラストレーターのももも様、
そして読んでいただいた全ての読者様へ、

ありがとうございました。

    2007年3月14日 相変わらず仕事そっちのけ壱無知 來智
捻れ、繋がる、人 最終話
- エピローグ -

二人は姿を消しました。
ルルア、トレイスの両親にはそう説明した。トレイスは魔術暴発後、
意識を失い倒れたまま、今もまだ回復していない。
帰ってくることはない。最愛の姉、心から信じた師、二人は最悪の
形で失われた。裏切りの真実、別れ、どん底にまで貶められたこの
先、トレイスは這い上がってこられるのだろうか。
心に深く癒えない傷が刻まれた。
今は時間が必要だ。
一律に留まることなく流れる時間で少しでも薄まるように。

未来は果てしなく無限の可能性で溢れている。
トレイスがこの先、立ち上がり、強く優しく、笑顔でいる未来が沢
山存在しうる。
そんな彼と再会出来ることを願う。


街を見下ろせる丘で、太陽は今日も存在を主張するように、眩しく
景色を照らす。
晴れやかから程遠い心境と面持ちに、責め立てるような太陽の光は
目を背けたくなる程に痛く、ジメッと滲む汗が不快を上塗りする。
風が髪をなびかせるも、涼しさをもたらすことなく、乾いた空虚な
感情を揺り動かし、左手に持った小瓶の重みが増すだけだ。

足のすね近くまである、少し大きめの石の前で屈み込む。
先ほど近くで見つけたもので、街が見えるこの場所まで、運んだば
かりのため、見た目通りの重さに腕の感覚がいまだに鈍い。
脱力しきった腕に、過負荷を容赦なく与えるべく、鞭打って残った
力で石の手前に浅く穴を掘り、手に持った小瓶のコルクを抜くと、
瓶の口から煙が俄かに霞む。
真っ白い砂のような、手に乗せると水のようにさらさらと流れてい
きそうな細かい粒子、吹けば音もなく飛んでいき、空気と混じり溶
けていくと思わせるそれは、ルルアとメイデルク、二人の命の跡だ。

夢を塞がれた末に薄い誇りを捨てきれず、憧れた魔術のために人生
と恋人を賭け、自己満足と自己顕示に盲目したメイデルク。
愛する者のため、死すら恐れずに全てを委ね、全てを捧げ、献身に
生きる意味を見出したルルア。

あの時の言葉がまざまざと蘇る。

「あいして……」

この言葉には続きがあったのだろうか。
『愛してる』と、ルルア本人の気持ちを最後に伝えたかったのだろ
うか。
それとも『愛して』と、魔術に憑かれ魔術しか見えなくなっていた
メイデルクに対して洩らした願いだったのだろうか。

零れ落ちる二人の結晶が地へと吸い込まれ、新雪のように、白が広
がっていく。
小瓶に少し残し、蓋をして穴へ埋めた。
黒く重いモヤが胸を圧迫し苦しく、喉が捻られるほどに悲痛で、後
悔と自己嫌悪が押し寄せては責め立てる。

私は何をした。

何故足が前へ動かなかったんだ。

何故救うことが出来なかったんだ。

弱いから。弱いから。弱いから。私は弱いから。

まただ。まただ。まただ!

何度となく自分の弱さに打ちひしがれ、何度となく認識させられて
いるはずなのに、それでも私は弱いままだ。

守りたいものがある。もう二度と失ってはいけない大切なもの。

目の前が暗く深く不快で膨大で暴虐な闇に覆われ、 何も見えずに、
何も聞こえず、自らを責め、責められ、殻を閉じ全てを閉じ、動か
ず、喋らず、己の意識を拒み、寂寥と苦心に苛まれ、自分と世界を
絶望した『あの時』。
あんな気持ちをもう感じたくはない。
強くならなければならない。
頼られたときに救えるよう、僅かな希望を確実に掴むために。
恐怖、怯えを寄せ付けず、躊躇い、後悔を生まないために。
確固たる意志を貫き、揺るがない自分であるために。
自分の過ちに気付き、繰り返さないために。
そして、笑顔を守れるように。

滲んだ瞳を乾かすかのように、丘に風が舞い降りる。
簡素な墓石は二人分の想いを背負って微動だにせず、一望出来る街
を見下ろす。
始まりの場所である図書館が一際高く聳えていて、魔術の話題で盛
り上がる二人の姿が脳裏を掠める。
この場所を選んだ理由でもあった。

ふと、目線を下げる。
絶大な疲労を抱え、千鳥足で丘を登ってくる少女がいることに気付
く。
フラフラと亀にも負ける速度で、しかし、それでも立ち止まり、休
まずに登り続ける彼女。
出掛ける前の私の不器用な微笑みが気になったのだろうか。
心配をかけさせないよう下手に振舞った会話に、小首を傾げていた
ことが思い起こされる。
彼女は顔を振り仰ぎ、私を確認すると、柔和な笑顔で手を振った。

私に笑顔をくれる大切な少女。

私が命にかけて守るべき者。
トレイスがルルアへ向けた思い、ルルアがメイデルクへ向けた感情。
想いが、繋がりが、心に強固な芯を通す。

どこかよくいる物語の主人公さながらに、打ちひしがれ、起き上が
り、噛み締め、強くなりたいと願うように、私も類に漏れず、誓い、
願い、刻む。

もうこんな惨めな思いをしないために。
意と共に身体を翻し、墓石に背を向け、歩き始める。

失わないための一歩を。繋がりを守る一歩を。


                          完


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捻れ、繋がる、人 第八話
- 8 -

「……やめろ……
やめろぉぉぉぉ!!!!」

メイデルクが詠唱を始める。途端、底なしのように真っ暗な足元に
光が点り、輪を形どると内部に正五角形が浮き上がってくる。
光の総量が増し、引力とも言うべき力が足と地面を繋ぎ止め、過負
荷な力に身体も捕らわれる。

「―――イグニション」

目の前が白一色に覆われ、爆発する。

白熱が闇を照らし、輝かしいまでの光量が舞い上がった。

爆風に顔を撫でられ、光の柱に目を留めた。
空へ伸びる白光はまるで、月へと誘う地上との架け橋のようであっ
た。

「……避けましたか」

正確無比で詠唱速度も非常に速い。
詠唱開始、魔方陣完成、発動に一秒もかかっていないだろう。
魔術制御の質の高さは本物。ここまでの魔術へ至るに一体どれだけ
の訓練をしたのだろうか、どれだけルルアの魔力を酷使したのだろ
うか。
状況は一刻を争う。メイデルクに魔術を使わせるわけにはいかない。
早急に拿捕し、行動に制限をかける必要がある。
身体を傷つけず、また魔術も使わせないようにしなければならない。
―――懐に入り、一撃を加え意識を絶つ。
それによって生じる多少の痛みは仕方がないだろう。
魔術を使い続けられるよりは良い。

光の柱は未だ空への繋がりを太く保ち、私とメイデルクの顔半分を
照らし続けている。
右は薄く浅く明るく、左半分は濃く深く暗く。
まるで内面を曝け出させるように。
私は光から目を逃がすように闇へ身体を傾け、溜め、瞬発。
踏み、噛み、蹴り、駆る。
接近、近接、着地。
目を見開くメイデルク。
近接戦闘の経験はないのだろう。
それでも無意識の防衛反応が腕を動かす。
私を跳ね飛ばそうと身体を狙って突き出してくる。
威力も迫力もないメイデルクの突き手の側面に、左手首を噛ませて
少し軌道を変えてやる。
バランスを失うメイデルク。
いなした力と踏み締めている足、腰へ力を伝え、捻る。
右肩、肘、握る右手。
左側面からがら空きな相手の顎。
腰を落とし開いた両足、回転軸、肘を介し、斜め下から狙いを定め
る。

―――捉えた。

その時、


「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」


肘に溜めた力が留まる反発力と打ち消えるように逃げていく。
咄嗟に声のした方へ顔を向ける。
そこにはルルアと、支えるように肩を貸すトレイスが立っていた。

力なくふわりと私から体を離すように後ずさるメイデルク。

「……やめてください。彼を、傷つけないで……」

嗄れ枯れに必死に声を出すルルアは、立っているのもやっとと言っ
た様子で、額からは汗が流れ落ちていた。

「ルルア……」

若干距離をとったメイデルクの呟きが聞こえる。

「……お願いです。彼を、責めないで」

懇願。いつから居たのかはわからない。それでも事態をほぼ把握し
ているような物言いだ。

「やっぱり、わかっていたんだね。自分の病気の原因を」

私の問いに真摯な目をしてコクリと頷くルルア。
先ほどは無言で通し、先送りにした答えを、聞いているような感覚
に襲われる。
ルルアの着替えの際、彼女の右腕を持つと、顔を顰めた。
確認してみると怪我をしていて、何時の怪我なのか、どうして怪我
をしたのかなどを聞いても無言で通されたため、確証は得られなか
ったものの、無言こそが、推論の肯定をしているように思えた。
同時期に同場所に傷、魔力の損失、これだけでもメイデルクとルル
アとの密接なリンクが想像される。

「魔力を通してかどうかはわかりません。でも、彼の想いはいつも
私に届いていました。心が繋がっているんです。魔力がなくなって
しまう原因もわかっていました。でも、それで構わないから、私は
彼の望むままに・・・・・・」

「自分が傷ついてもいいっていうのか?」

「構いません。彼の痛みが少しでも和らぐのなら、どんな痛みだっ
て替わってあげたい」

「魔力だってなくなってしまえば、身体にどんな影響があるかわか
らない。今日だって命を落としかけただろう?しかも、メイデルク
は自分の欲求のためだけに魔術を使っているって、そんなのが許せ
る!?」

「許せます。むしろ望んで私の魔力を使って欲しい、とさえ思って
います」

弱弱しい外見からは、想像も出来ないほどに、力強い目をしている。
傷を負うこと、死すること、自らが犠牲になることに疑念すら浮か
ばない強い信念が見て取れる。
他人のために自分を殺せるというのか。
他人のために全てを捨てられるというのか。

「彼は私を必要としてくれています。彼のために生きていると実感
出来るんです。そして、繋がっている感覚、共有できる意識を失い
たくないんです。彼が望むのなら、私の魔力で良ければ幾らでも使
ってほしい。
死んだって構わない。彼が満足するのなら、幸せになれるのなら、
どうなったって構わない。
傍にいることは出来なくなるかもしれない、彼に抱きしめられるこ
ともなくなるかもしれない、それでも、それでも私は幸せ。
それが私の生きる意味だから。
それが私の生き方だから」

光り滲んだ潤いをもった瞳。瓦解する寸前のダムのようなルルア
の瞳から、ゆるりと一筋の涙が落ちた。
それがまるで合図であったかのように、一人で置いていくな、と
言わんばかりに、追うように、止め処なく涙が溢れた。
気丈な表情に伝う涙。
拭き払うこともせず、流れるままに、感情を吐露したルルア。
目を真っ赤にして、それでも俯かず、私とメイデルクを見つめてい
る。涙で滲んだ視界に映っているのはメイデルクだけなのだろうか。
全てを捧げ、死をも厭わず、至福を享受し、彼女は生きている。
私よりもよっぽど強く。

これ以上はお節介なのか。
両者の間で成立している魔力の受容。
こんなにも強く、強靭な意志で、愛する心で生きている彼女が、
傷つく姿を容認出来るのか。
それでも……彼女の存在の要であり、諸悪の根源でもあり、ルルア
を傷つけているメイデルクは・・・・・・どうしても許せない。

「せ、せ・・・・・・んせ・・・・・・い・・・・・・」

閉じた喉から無理やり声を引きづり出したのはトレイスだ。
今やよろよろで力の失った体、焦点が定まらず小刻みに揺れる目、
少年の心に圧し掛かる残酷で耐え難い現実。
姉の病気を治そうと、信用信頼していた。
三人は運命共同体として家族よりも強い絆で結ばれているとすら、
思っていた。
しかし、真実は過酷に凄惨で、全ては裏切りであった。
信じ、依存の度合いが高かっただけに、裏切られたときの衝撃は、
莫大に自分を傷つけ追い詰める。
しかも真実を知らなかったのは自分だけ。
『ごめんね』
ルルアが事あるごとに謝っていたのは、全てを知っていてなお、隠
すことでの居た堪れなさからのもの。
そんな謝罪が、トレイスの心を波立たせる。

……蚊帳の外。

目の前が漆黒に、体中を冷たく悲愴な感情で飲み込まれる。
希望を裏切られた。希望が裏切った。

裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り
裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り
裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り

「せん、せいが……ねえ、ちゃんを……」

「トレイス。あなたはいいですよ。先天的に魔術師としての素養を
持ち合わせているのですから。体内から湧き出てくる魔力を使える
のですからね。しかし僕はそうはいかない。だからルルアに『協力』
してもらっているのです。ルルアは僕の力になってくれる。僕に全
てを捧げてくれる。そして、世界に見せ付けてやるのですよ。僕の
技術!知識!力を!そのために『使える』ものは全て『使う』まで
です」

―――――!!

ルルアの声を聞いておいて、それか!?
自己顕示などというくだらないものの為なら、誰がどうなろうと構
わないというのか!

「……うがぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!!!!!」

私が怒鳴ろうと発しかけた声を丸ごと掻っ攫って、雄叫びを上げた
のは誰あろうトレイスだ。
まるで体から蒸気でも出ているかのように、薄く赤いモヤがトレイ
スを覆っていた。白目を剥いて、完全に我を失っている。

私の視界に光が走る。
暗闇に浮かぶ眩く美しい光。空中に黄金色の軌跡を作って飛び交う
光はまるで宇宙の縮図であるかのように、円周運動しながら、線を
描いている。
幾本もの光が線を結び、綺麗な円が出来ている。
その中心に居るのは、メイデルクだ。

『これは……!?』

っまずい!

不可解な現象に困惑のメイデルクは、光にうろたえて、動けずに、
曲線を目で追うことしか出来ていない。
加速する光の円周運動。線は厚みを増し、太く強い輝きをもった輪
へと進化していく。

「逃げてぇぇ!!!!!」

ルルアが涙を振り撒き、有らん限りの声で叫び、駆け出した。
その声にメイデルクが反応を見せ、ルルアと視線が交差する。

「……ル、ルルア……た、たすけっ………!!!!」

おびただしい数の光輪が、瞬間、弾け飛んだ。
目をつんざく光量に耐えられずに、視線を逸らす中で見えたのは、
まるで太陽でも現れたかのように、視界一面が白光に染め上げられ
た白銀の景色だった。

視神経を焼き尽くさんばかりの光は、束の間目蓋の裏に張り付いた
ようであったが、徐々に明順応から暗順応へと推移し、暗く深い夜
の黒がじっとりと染み渡り始めた。
視界が定まらないながらも視線を戻す。飛び込んだのはやはり白い
光だった。
メイデルクが燃えていた。白い業火に包まれて。

ルルアがメイデルクの傍へと歩みを寄せた。
メイデルクの方はと言えば、ひざ立ちで炎の中、すでにその動きを
止めている。
苦しげに、杭を打たれたかのように、胸を押さえるルルアは、重た
く拘束されたような足を引き摺り、弱弱しく、よろめきながら、メ
イデルクを目指して歩いている。
静寂を打ち破るように、嗚咽が場を支配した。

「……ひぐっ……い…いっ……いや……」

音も無く燃えるメイデルクを目指し、涙で顔をクシャクシャに乱し、
喉を震わすように泣くルルア。

途中、ビクンッと歩みが止まると、反面メイデルクが微かに動きを
見せた。
ルルアは心臓が悲鳴をあげているかのように、苦渋に顔をしかめ、
胸に爪を立てる。
禁呪が発動している……燃えるメイデルクの肉体を癒そうと、ルル
アの魔力を媒介に魔術が発動しているものの、白い炎による肉体の
燃焼速度が回復速度を凌駕しているために、まるで癒える様子はな
く、それでも自動的に発動し続ける魔術が、残り僅かとなろうとも
ルルアから魔力を搾り取っているのであろう。

「………い、いま、行く………から……わたし…が……たすける…
……から……」

ルルアが再び歩き始めた。か細く震えた声で、泣き声、嗚咽に紛れ
メイデルクの名を呼びながら。
二人の距離はすでに1メートル程までに狭まっていた。

「……しな…ないで……わ…たしの……いのち…を…あげる…から
……おねがい……おねがい……しなないで…………しな…ないで…」

……何が出来る。今、私は。
終わりのない魔力搾取を止めなくてはならない。

『メイデルクを……殺す……』

それしかない。
大粒の汗にじっとりと濡れたコブシに決意が漲る。

右手のブレスレットを揺らし空間座標転移を発動。
途端、重量のある豪奢な装具が実体となって右手から肘までを覆う。
腕に絡みつきトグロを巻くように締め付ける武装、ブレスレットを
揺らした要領でもう一度手首をスナップさせると、絡み付いていた
縄のようなものが解けていき、それが長く、弾力のある鞭だとわか
る。
猶予はない。ルルアの魔力が底を尽きる前に、そして一度固めた決
意が鈍る前に、決着を付けなくてはいけない。
腰を落とし、次いで腰を軸に右手を背中後方へと構え、溜める。
腕が重い。武具の重さではなく、その右手によって搾取される命の
重さであると感じた。

それでも私は

酷く鈍く重く痛く冷たく熱く震える腕を、一切の一業を排除し拒絶
するように

突き出した。


鞭の先端が鋭い切っ先となって、燃えるメイデルクの胸へと沈み込
み、突き抜ける。
肉体を貫く抵抗と厚みを伴った嫌な感触が手応えとなって腕を駆け
巡る。心臓を貫いた。

メイデルクの死。

時間の問題であったとしても、死を決定的にもたらした一撃は、メ
イデルクの残る生の代わりに、ルルアへ希望の生を託したはずだ。
ルルアの魔力欠損は無くなり、苦しみから解放される。

当のルルアがメイデルクの前で立ち止まる。

「ルルア……メイデルクはもう……」

わかっているはずだった。メイデルクの死が確実に現実となったこ
とを。誰よりも繋がっているからこそ、一番に実感しているはずだ
った。

悲しみと苦しみ、悲哀と悲痛、締め上げるほどに痛む身体と心で、
ルルアが燃え盛り息絶えたメイデルクを目を見開き見下ろしていた。


そして、次の瞬間、

一片の躊躇もなく、一切の恐怖もなく、一縷の迷いもなく、ただ、
一心の愛情で、燃えるメイデルクを抱き締めた。

「!!」

即座にルルア諸共飲んで、白い炎が勢いを増し輝きと熱を放つ。
静かに、しかし確実に続く燃焼。ルルアが口を開いて喋っているよ
うだが聞き取れない。微かに聞こえてきた言葉。

「…………あい…し…て……」

白刃の炎の中、抱き締めるルルアの顔が、安らかに微笑んだように
見えた。力強く包み込む腕は、もう二度と離れない鎖のように、二
人の心と身体を一つに繋げているようであった。



炎は二人を消し去るまで燃え続けた。
何も出来ず、誰も救えず、混乱だけをもたらした。
自分の無力さと不甲斐なさへの憤りをどこに向けることも出来ず、
握ったコブシから血が滴り落ち、固まってもなお、その場を動けず
に、私は二人の昇華を見届けるしかなかった。




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捻れ、繋がる、人 第七話
- 7 -

言葉を探すように、一呼吸置いて、しかし見事にヘラヘラ顔のまま
メイデルクが声を発する。

「―――何を言っているのか理解に苦しみますね。ルルアの病気が
僕に因るものだと言っているのですか?一体何を根拠に仰っている
んでしょうかね?」

自分とメイデルクの周りを覆う暗闇の厚味が増していくのを感じて
いた。厳格に厳粛に気持ちを保ち、冷静に事象を見つめていく必要
がある。
確固たる理由があるわけではない。
適当に言ったわけでもない。
ただ、辻褄を合わせると行き着く推論だった。
材料はいくつかあった。それがどこかで引っ掛かっていて、取り除
いていくと一本の線になったまでのことだった。

思考をトレースするように、紡ぐ言葉がダマにならないように、事
実を引き出したい。

「ルルアの右肩。見たか?大きな傷が出来ていたよ。既に包帯で処
置はされていたけど、血が滲んでいたことからも数時間前には出来
た傷だろうと思う」

「―――傷……知りませんね。僕達がマナを取りに行っている間の
ことでしょうね、きっと。食器の割れた拍子にささったのかもしれ
ませんね」

「母親に確認してみたよ。そうしたらルルアが倒れたときに、出来
たものではあるみたいだったが、服の上から皿が刺さったわけでも
なく、まるで以前からの古傷だったかのように、血が出てきて、驚
いたと言っていた。実に不思議だろう?」

怪訝な表情で、左上に視線が泳ぎ、顔を手でこするメイデルク。思
考しているということだ。
不快から脱する言葉を探している。
私は邪魔をするように言葉を挟みかける。

「そしてどこか既知感を覚えるはずだ。私だって感じたからね。
同時間、同箇所にメイデルク、お前も傷を負った。ルルアの意識が
戻った時、まるでデジャヴュを見ているようだった。
あの時、ルルアは右手を上げかけて、下ろし、左手を上げてお前の
手を探した。
魔術の発動に左手を上げたお前と全く同じだ。
そんな偶然があるか?
そんな低い確率を考えるよりも、よっぽど説得力のある考え方があ
る」

真顔で私を見つめる。先ほどまでの集中に欠けた顔からは似ても似
つかない真剣な表情。
事実を物語っているようだった。

「お前とルルアがスピリチュアルリンクしている場合だ」

真顔を受け止め、威圧をもって視線と言葉に乗せて攻める。

「スティグマ――聖痕現象ってものがある。聖痕現象は信仰宗教上
で神と同意で崇められた指導者が死した状況、例えば腹を刺されて
死んだ場合に、盲目的に信奉する信徒の中に、その指導者と同様に
腹に傷――聖痕が現れ、指導者の体験を体現する奇跡といわれるも
のだ。トリック、というか原因は、信仰からくる極限までに陶酔す
る自己暗示が、脳に異常を与え、肉体にまで影響を及ぼしているん
だが、この現象とほとんど同じことが起こっているとみていい。
お前とルルアとの繋がりが、ルルアの肉体に影響を与えているんだ
ろう」

「僕とルルアが心から繋がっている、と言うことですね。
ルルアを愛する気持ちが全てルルアに伝わり、ルルアも受け止めて
くれているという証じゃありませんか。これは素晴らしいことです
よ」

喜々として浮つくメイデルク。私は射抜くように視線を強め、同時
に釘を刺す。
ここまでならまだ、異常なまでの精神的繋がりとして、恐ろしい程
の相思相愛をもって片付けられるかもしれない。

だが……

「お前とルルア、二人の繋がりが魔力でなければ、ね」

全ての原因、元凶であろう憶測。観察、経験に基づく確証なき予測。

「どういう意味ですか」

メイデルクの声の質が、一段低くなったように思えた。
動揺している様子はない。ただ、静かに、こちらの話を聞こうとし
ている。かわすことから受け止める防御体制となったような、どこ
か身構えた落ち着きを感じた。

「―――魔力を介した繋がり。介していると言っても、恐らく一方
通行。ルルアからお前へと流れる道のみだろうと思う。
傷の話に戻るとすると、傷を受けた後、お前はすぐに回復していた。
確かデュアルドローだと言っていたな。
しかし、傷を受けたのは詠唱中だったはず。傷を受ける前に回復魔
術を使うわけがない。
つまり傷が癒えたのは、本人が詠唱し、魔術を発動したからじゃな
い。考えられる可能性としては、アイテムを使った、もしくは他の
誰かが魔術を発動させたか、だ。
しかし私が見ていた限り、アイテムは使っていないし、トレイスが
魔術を使ったような魔方陣も描かれてはいなかった。
では、何故癒えたのか。
ここでルルアの病気、原因不明の魔力欠損を思い出した。
あくまで仮説だが……
ルルアの魔力によって自動的に傷が癒えるよう身体に術式を組んで
いるんじゃないのか?
自分の身体が傷ついた瞬間に発動し、ルルアの魔力から魔術が発動。
自然治癒力の向上により、加速度的に傷を癒せるってわけ。
そしてここでもう一つ、疑問が提起される。
何故、ルルアの魔力を使うのか、ということ。
この答えは単純明快。メイデルク、お前は魔術を発動させられる程
の魔力を有していない。
いくら魔術のロジックを組めたとしても、潜在魔力がなければ、発
動させることが出来ない。
魔力を持っていないことは、蝶の木の一件で想像がつく。
蝶の木の持つ魔力は非常に膨大で、それは潜在魔力を揺り動かし、
互いに引き合おうとする力が発生する。
トレイスはその魔力の引力に身体を強張らせていた。
その中でいて、お前はまるで平然としていたな。
その時、私は、お前の魔術師としての素養評価を過小した。
怪物の木の狩りに関しても、動かないよう言い渡したのもそれから
きている。
だが、そんな予想は意にも介さず、見事な魔術を披露した。
死を直面して瞬間的に魔力が跳ね上がったのかとも思ったが、そう
ではなかったんだな。魔術の発動がルルアからの魔力供給だったと
考えたほうが説明がつく。
ルルアの病気、魔力欠損も外部からの強制的な搾取によるものだと
すれば、当然心身機能にまで影響を及ぼし、意識をも失う事態を引
き起こすし、死んでしまうことだってあるだろう。
不可解な魔術、不明瞭な病気、全てが繋がる。
さぁどうなんだ!」

これが私の推論だ。散らばった材料をかき集めて、組み立てると出
来上がった稚拙な設計。考慮不足なところもあるだろうが、骨組み
の部分は揺ぎ無い自信がある。
だんまりと言葉を閉ざしたメイデルクではあったが、顔色、表情に
変化が見られない。
呆然とまるで何も聞いていなかったかのような立ち居ずまい。
反論を考えているわけでもなく、私の続く言葉を待っているわけで
もない。ただ淡々と、存在だけするかのような、透明で薄っぺらく
希薄。
空虚な時間に慣れ親しむように、言葉を漏らす。

「論理的ですね。まるで全てを見透かしたように看破する推理小説
の探偵のようです。そして独白を始める犯人ってところでしょうか」

フフっと不敵に笑う。発せられた言葉にも重さはのってこなかった。

「先ほどの推論に勝るとも劣らない、完璧なロジックを考え付くこ
とが出来ませんよ。しっかり考えておくべきでしたね。でも、それ
でも、数ヶ月は誰にも気付かれることなんてなかったもので、慢心
していたのかもしれません。それがたった一日足らずで、バレてし
うなんて、観察力と思考力の違いというやつなんでしょうか。
恐れ入りましたよ。そうです。正解です。ルルアの病気は僕の禁呪
です」

あっさりと大したことでもないよ、と言わんばかりに告白するメイ
デルク。悪びれた様子も、慌てている様子もないことが、逆に私を
苛立たせる。

「何故、こんな事をしている!!」

「そうですね。単純です。魔術を使いたいからですよ。僕にはどう
やら魔力がないようなのでルルアの魔力を使っているだけです」

「……『だけ』、だと!?
魔力を無理やり使えば、身体にどれだけの負担があるかわかってい
るのか!身体だけじゃない!魔力が人間の活動のどの要素に関わっ
ているかってのは殆ど解明されていない。つまり未知数。何が起こ
るかわからないんだぞ!!」

「わかっていますよ。わからないことが。ガイドさんこそわかって
いるんですか?僕の苦悩が。僕の力では魔術が使えないとわかった
ときの押寄せるように呑み込むように閉ざすようにやってきた絶望
感と虚無感を」

「さっぱりだね!たかが魔術が使えないくらいで何を不自由する
っていうんだ」

「魔術は世界に宿った奇跡の具現ですよ。素晴らしいじゃないです
か。この世に生を受けて、何も残すこともなく、ただ平凡に、ただ
漠然と、ただ生きることで終わるような凡人にはなりたくないんで
すよ。僕は生きている。そして僕はここに居る。
高度な魔術を操り、力を得ることで、自己を確立する。
魔術は僕のアイデンティティーなんですよ。
僕はこれで認められる。世界が僕を見てくれる。
魔術が僕の存在の象徴であり証明なんですよ」

手振りを加えて力説するメイデルク。
魔術が自己を明確に世界へ主張する手段であり、しかし憧れた魔術
を自分の力だけでは発動させることが出来なかった。
追いかけて得ようとすれば、足元から崩され掬われたわけだ。
抑えられた魔術への妄想はメイデルクを支配した。
そして禁呪へと手を伸ばしたわけか。

「―――下らない。そんなことで世界はお前を認めない。
残酷だが、世界はお前が想像するよりも、ずっと冷酷で無関心なん
だよ。そんなことよりも、身近にお前を認めている人がいるっての
に、それに気付かないのか!?それともまだ足りないのか?
彼女を失ってもいいのか!?」

「ルルアは僕を応援してくれている。僕は僕のやりたいようにやる
だけです」

微笑むメイデルク。囚われた一意専心の志に、周りが見えていない。
世界が認めてくれたら何が起こる?何が変わり、何を失い、何を
得る?
脚光をあび、上辺の賞賛に歓喜し、至極を実感したあと、暫らくし
てきっと気付く。振り乱し、打ち払って捨てて来たものの残骸が、
足の踏み場を埋め尽くし、自分しか立てない場所になってしまって
いることを。孤独に一人しか立てないことを。

「禁呪を解け」

「イヤです」

「禁呪を解け!!」

「イヤですってば」

「このまま解かないつもりなら―――」

「解かなければ、どうするって言うんですか。僕を痛めつけてみま
すか?僕に攻撃し、僕を傷つければ、自動的に魔術は発動し、僕の
傷を癒し、ルルアの魔力を吸い、先ほどの話から考えれば、同じ傷
をルルアも負うことになるんですよ。それでも僕を攻撃しますか。
僕への攻撃はルルアへの攻撃と同義なんです、さぁどうしますか」

その通りだった。メイデルクを攻撃すれば、スピリチュアルリンク
しているルルアにも同程度+魔力喪失の危害を加えることになる。
自らリスクを負うことなく、リンクにより魔力の供給を受け、また、
他者に見抜かれたとしても、リンクのルルアを人質にすることで、
打開策を押さえ込む保険により、攻守に隙のない一石二鳥のシステ
ムと言える。
スピリチュアルリンクを解くためには、ルルアとの精神的繋がりを
断たなければならない。しかしながら、それは無理だろう。
次に魔力の供給遮断、これも非常に困難である。魔力を搾取するた
めに物理的道具を使うわけではなく、ルルアの身体に術式を施すこ
とで行っているため、原因となっているものを壊せばいい、とはい
かない。施した術者でなければ、解呪が出来ない。これが禁呪とな
っている理由である。

どうする。

「動けないでしょうね。でも僕は動けますよ。知られたまま放って
置いても構わないのですがね……多少やっかいなので、どうにかな
ってもらいましょう。そうですね、僕の魔術で痛い目にあってもら
いましょうか。
あっ、もちろん他言無用していただけるというのなら、このまま何
もしないで帰りますけど?」

「禁呪を解けと言っているんだ」

間髪入れずに同じ言葉を繰り返す。

「……そうですか。わかりました。少し黙って頂きましょうかね。
先に言っておきますが、避ければ魔術を使い続けるまでです。
……ちゃんと当たって下さいね」

口の端が引き上がり、不気味に薄気味悪い笑みと、高く気色の悪い
笑い声が夜の暗闇に響き渡った。



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捻れ、繋がる、人 第六話
- 6 -

町に到着し、門を抜けると四十代半ばほどの女性が、鬼気迫る勢い
で切羽詰った声と共に、私たちに走り寄って来た。

「トレイス!メイデルク君!・・・・・・ルルアが、ルルアが・・・」

言葉にならない女性に気後れと戸惑いから、一瞬声をつぐむ二人だ
が、ルルアという名で緊張が走る。

「――母さん、落ち着いて!姉ちゃんがどうしたんだ」

トレイスは母親であるらしい女性の肩に手を置き、落ち着きを促す。
一度唾を飲み込んだ母親はトレイスの手を取り、言葉を反芻してい
るように一拍置いて発音する。

「―――ルルアの意識が戻らないのよ!!!!!!」




四人でルルアの元へ急いだ。トレイスが先頭に立って走り、私とメ
イデルクが後ろを追う形。母親は後方を遅れて走っていた。

ルルアの症状が表れたのは二、三時間程前らしい。
母親と晩御飯の用意を進めている中、ルルアが盛り付け用の皿を出
そうとした突如、皿の割れる甲高く激しい音と、人の倒れこむ低く、
かつ重たい音がキッチンに訪れ、倒れ込んだということだった。
娘の発作とすぐに判断した同室にいたルルアの父親は、慣れもせず
混乱で慌てつつではあるが、マナを取り出して、ルルアに飲ませる
も、苦しげな表情は回復の日の目を見ず、いつも以上に辛そうで痛
そうな苦悶で苦渋な呻き声をあげて蹲るルルアに対して、声を掛け
たり身体をさすったりしか出来ずに、冷静とは程遠く右往左往する
より他なく、元々少量しかなかった頼みのマナは底を付き、医者を
呼ぼうにも隣町に診察に行っており、タイミング悪く呼べず、途方
に暮れ、それでも確かに残る希望――マナを持ち帰るであろう、二
人をまだかまだかと待ち構えているしかなかったというわけだ。

全速力で走った末、家に辿り着いた一行は、勢いもそのままに、ま
るで蹴破らんばかりに無造作にドアを開け、ベッドへ移動されたル
ルアへと急いだ。
ルルアの様子は一目では理解出来ないほど、温かみも存在も感じな
い人形のようであった。
まるで死人かと思わせるほど蒼白に塗られた顔は、血の通いを無く
した生気の感じない無感覚な表情で、髪は汗に濡れて額に張り付き、
シーツの乱れ具合からも、相当苦しんだことを想像させるのは、容
易であった。
今は打って変わり寝息すらも聴こえず、ベッドの上だけ時間が止ま
ったように静まり返っていた。
手を尽くし、手をこまねき、手掛かりを失った父親が床に腰を落と
してへたり込んでいた。
手には空の瓶が握られ、絶望に憤る気持ちが握りコブシの力強さに
比例し、示されていた。

トレイスは目を見開いて現状を理解しようとしていた。姉ちゃん!
と叫んでルルアの横に跪き、揺り動かして喋りかけるも、反応のな
い、マネキンのようなルルアに語り掛ける声は、涙を含んだ掠れて
響きにくい叫びになっていた。
先生!っと振り仰いでメイデルクの持つマナに望みを託す。

呆然と呆気に取られたように突っ立っていたメイデルクは、トレイ
スの叫びによって我に帰ったように焦点が蘇る。
マナを取り出し、無音で横たわるルルアの口元へ近づけ、零れない
よう注意しながらマナを注いだ。
祈るような目のトレイスと父親、部屋のドア付近にはようやく追い
ついた母親が息を切らしながら、ルルアの様子に息を呑んでいる。
部屋にいる全員が声を殺し、一人の音を待った。


数分・・・・・・実際は数秒なのだろう時間がゆっくりと流れ、遅れて舞
い戻った希望の糸に縋り付いていた。

変化はやって来た。

粉雪の如き白い顔に赤みをレイヤーしたように、ルルアの顔に温か
みが見てとれた。
静寂な部屋で、全員が呼吸しているにも関わらず、横に寝たルルア
の呼吸が、一際大きく聴こえてくる。
変化は色や音だけではない。
微かだが、凍り付いたように固まっていたルルアの指が、ピクリと
動いた。
こちら側から確認出来る右手が、少し上に持ち上がり、ストンっと
力尽きたようにベッドに落ちると、まるでそれが合図であったかの
ようにルルアの瞳が光を取り込む。
眩しそうに薄目で「んん・・・・・・」と吐息を漏らした。

「―――姉ちゃん!」

「―――ルルア!」

私を除く四人が、一斉にルルアに呼びかけた。
ぬめり込んで静止した時が、再び鼓動し始めた。

「・・・・・・・・・・・・メ、イ・・・・デ・・・・・・ル・・・ク・・・・・・・・・」

針の穴を通すような、細く震える声が、捉えきれない視界の中、呼
びかけられた声だけを頼りに、祈り、捧げ、求めるように、メイデ
ルクの名を呼んだ。

「・・・・・・ルルア。僕はここに居ますよ」

メイデルクはベッドの横に立ち、自ら視界に映るようにルルアの目
を覗き込んだ。
ルルアは柔和な笑顔を浮かべ、オズオズと揺れ動く左手を持ち上げ、
メイデルクの手を捜し求めた。
小さく細い繊細で精彩なルルアの手を、温かく大きな手で、まるで
軽く握れば壊れてしまうかのように優しく丁寧に包み込む。

「・・・・・・ぶじ・・・だった・・・・・・よかっ・・・・・・た・・・」
ルルアが心から安心したように言葉を紡ぎ、二人は手を結び、微笑
んだ。

トレイスは極度の緊張と疲労が晴れ渡ったように安堵の顔になり、
父親は焦げ付いたように握り締めていた瓶をそっと床に置いて、嬉
しさが零れ落ちて顔に表れる。
母親はドアに寄り掛かって座り込み、涙を流して喜んだ。
ルルア、良かった・・・ルルア・・・ルルア、っと止め処なく溢れる涙と
声が、不安と恐怖、絶望を洗い流すように部屋を埋めた。

 *

三十分後。
香り立つ湯気に、香ばしく優雅な匂いが立ち込めて、一口飲むと、
苦すぎないまろやかな味が広がり、疲労した身体、雑然と散らかっ
た思考をリセットしてくれる。
もう一口、コーヒーを飲み、それでもどこか頭に引っ掛かるものを
振り払いたくて、カップを置いた。
丁度同時に、ドアからメイデルクが姿を現し、水を頂いてもよろし
いでしょうか、と恐縮に訊ねた。
水に反応してルルアの着替えに考えが及んだ私は、椅子に掛かった
タオルを持って、着替え手伝うから入ってきちゃ駄目だよっと言い
置いてルルアの部屋へ移動した。

ルルアは突然の闖入者に怪訝に顔を顰めたが、すぐに気が付き、思
い出したらしい。
ざっくりと説明したあと、ごめんなさいっと言われて、トレイスの
言葉通りだと苦笑し、それを隠すようにタオルを掲げた。

「着替え、手伝うよ。汗すごくかいてるでしょ」

私がそう言うと、ルルアはにっこりしたかと思うと、急に慌てて
「あっ!いぇ、いいです!」と強い調子で断った。
何か隠し事を悟られまいと気が付くも、咄嗟に反応してしまい、
違和感を自ら作り出してしまうような、直感と対応の悪さが滲み出
る断り方に思えた。

「いえ、大丈夫です。汗はもう乾いてますから・・・・・・」

っと取り繕うように、先ほどの言動のフォローに入るが、口と反面
して、行動、表情が明らかに不審である。

その行動が、一連の騒動を鑑みて、小さな小さな染みとなっていた
私の頭にもたげた微かな可能性を否定したくて、虚ろに怯えた瞳の
ルルアににじり寄り、私は彼女の右手首を掴んだ。

 *
 
「メイデルク、少しいいかな?」

そんな風に、月明かりの映える夜空の下、メイデルクを呼び出した。
頭の横に疑問符の浮かんだ表情をしたメイデルクは、渋々といった
様子で私の後を付いてきた。
丁度、夕食時でどこからともなく流れてくる食欲そそる匂いが、疲
れに消費された空腹に刺激よく胃液をもたらす。
周辺の家々から漏れる灯りが、大きさも境界も定まらない模様を映
し出し、地面に温かみを塗っていた。
風は気持ち良くそよぐものの、冷たい身体で感じることが出来たの
は、流れる血の熱く循環している事実だけだ。
鼓動が早いわけではない。寧ろ平常時よりも抑え気味に脈打ってい
るのではと思えるが、音だけは大きく身体の中を駆け巡っている。

早急に確認すべきことがあった。

「こんな人も通っていない夜の街道に呼び出してどうしたのですか?
まさか、僕に襲い掛かろうなんてことは、まぁあるわけもないです
よね・・・・・・冗談です。冗談。あっ、わかってますよね・・・・・・」

惚けた調子は変わらず、石を蹴飛ばしたりして、一々動作に落ち着
きがない。

回りくどいのは好きではない。切り出す。

「メイデルク。ここへ呼んだのは、他でもなく、ルルアのことで訊
きたいことがあってね」

「――ルルアのことですか?大体馴れ初めはお話したと思うのです
が、何を聞きたいのでしょう?」

「――ルルアの病気について」

「はいはい。どうかしましたか?今日のはかなり危険ではありまし
たね。一舐めで十二分にも効果があり、症状を抑えることが出来て
いたので、まだマナの残量は大丈夫と思っていたのですが、このタ
イミングであれほど魔力に底が尽きるほどの事態が起ころうとは。
でも、間に合って良かったです。ルルアも一命を取り留めることが
出来ました。それもこれもガイドさんのお陰ですよね。まぁあの木
を倒したのは僕ですけど、僕だけではマナを得ることは出来ません
でしたから。そういえばお礼がまだでしたよね。今日は本当に有難
う御座いました。ただ欲を言えば、マナの抽出方法を教えて頂きた
いのですけどね・・・・・・これから先、またマナが無くなってしまうこ
とがあるでしょう。そんな時、自分だけで取りに行けたなら、って
やっぱり思うのですよ。駄目でしょうか?」

盗み見るように視線を寄越すメイデルク。お願いしますっと手を合
わせて懇願しているようだが、寒々しい。
そんな願いなど聞き遂げるわけもなく、私の話をずらしてくるメイ
デルクに、ほとほと怒りが表立ちそうになる。
応じる必要もなく、メイデルクの言葉は無視して、続けた。
ここへ呼んだ理由。

不信が触れる思考の中身。
雑多な破片の原像。

確信に至る核心を。

「―――ルルアの病気は、
     貴様の禁呪なのか?」




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お好み焼き
大阪。大阪と言えば何?





何があるんだ、って訊かれたなら、何もないと答えてしまいそうに
なるが、実際はそれなりにあるみたいで、例えば大阪城であったり
UのSのJであったり、はたまた食い倒れ太郎やグリコの看板で
あったりというわけだ。



大阪といえば食だという人もいるだろう。
代表的な食べ物でお好み焼きやたこ焼きといった粉もの。
関西と関東にて二分され味の濃さがあまりにも違うという、
関西風薄口うどん。551蓬莱の豚まん。


うまいものもある。
大阪に住んでいながら、たこ焼き器、通称たこやー器なるものが
ない家に住んでいるという類まれなる希少価値の高い私だが・・・・・・

ん、まて、そんなにみんながみんな持ってるのか?大阪では家族で
1台はたこやー器を持っていると言う風説が流布しているが、果た
してその普及率たるや本当なのかどうかさだかではない。




1億携帯時代、一家に一台はパソコンといった、本当にいつの間にか
当たり前のように、なくてはならないもののように、普及し、蔓延り
誰もが使ってるものと同様に、大阪ではそんな地位にたこやー器なん
てものが来ているのか?



それはないだろ!




さて、たこやー器を持っていない言い訳の苦しさに身震いしたので
前フリはこんくらいにして。






お好み焼きやさんに行ってきました!







うん。どーでもいいね!






大阪に住んでいながら、大阪に住んでるからこそ、お好み焼き屋、
通称お好み屋に行くことがあまりなかったというこれまた希少価値(ry
(もちろん何度かはあるy)




最近はランチを食べにいろんなところに足を運んでる中、
遂にお好み屋の番となったのです。






お店の名前は




ねぎ焼き やまもと








あんさん。




ねぎ焼きですやん!





って突っ込みは置いといて、とりあえず行って来た。





ここへ行こうと午前中に計画をたてて、お昼になった途端に速攻で
席をたち、一目散に店へ向かう。




何しろ、職場からは駅1区間以上離れてるので、移動だけで、
お昼食べる前にとてつもなく時間を食ってしまうのだ。






歩き続けて20分経過。






25分経過してようやくお店に到着。





少し並んでいたため、外で待ち、注文もそこで取られる。
ようやく中へ入れて30分が経過。


お昼休みの半分を消化する。






ここで折り返し?








やばくね?






今引き返せば、遅れることはない。
しかし、こんなところで引き返すわけにはいかない。
ここまで来てしまったんだ。
もう後戻りはきかないんだ。
そう、引き返すのはいつでもできる。
しかし、引き返さないのは今しか出来ないんだ!









席につく。
待つ。待つ。待つ。





他のお客さんが食べているのを見て、ソースやマヨネーズみたいな
ものはかけないのかぁー本当の味で勝負してる感じだなぁっと思って
40分が経過。






ようやく目の前に本日のランチがやってくる!





コテ、テコ、正式名称『起こし金』(wiki調べ)、ここではコテで
まず半分にカッティング、そして一口用に細かめにカットしていくと
店員がやってきて、





「お客さま、ちょっとマナーがなってねぇよ!表でろや!」



( ; ゚Д゚)




はい。それはウソで、どうやら、品を間違えたらしい。
もうカッティングしちゃったよ!そんで一口食べておけばよかったよ!
惜しい、惜しいことをした。





とりあえず、品物はあえなく下げられ、自分の注文した品が来るのを
またもや待つ。これで45分経過。



お昼休みは1時間。
残り時間は15分。1分で食べて、14分かけて帰ればなんとか
間に合う!





そんな早食い王の真似なんてして、のどに詰まらせて、ニュースに
なるわけにはいかなかったので、ノンビリする。






そして遂にやって来る我が『すじねぎ』






見てっ、コレ!
でっかいなぁ~それに湯気もいい具合に出てるで~
狐色にしっかりと焼かれて美味そうやんか~

そんじゃあ食べてみよか。
ソースもなんもかけんでいいんやね~

ほらっ!切口からも湯気がこんなに!
ね?おいしそうやんかぁ~
ではいただきます!


(1秒止め)

(モグモグ)
うんまぁ~!!めっちゃおいしいやん!
ふんわふわっにとろけるような、まるでたこ焼きみたいな生地と、
ネギのいい香りにシャキシャキ感、肉の弾力ある食感にソース
みたいもんつける必要がない旨みが口一杯に広がるで~

ホンマこれは、まさに、
お好み焼きのIT革命やぁ~







シーン






いや、マジでうまかった。
至福の時間が過ぎ、足らないと思うくらいにごちそうさま!





ぷはぁ~♪いいものたべたぜー






さて帰ろうかな。





時間は~





す、す、す






過ぎとるぅぅぅぅぅぅぅぅ!






ま、当然なんだけど。

ってことで早足で帰って結局18分遅れ。
だから何って、何もないんだけど( ´,_ゝ`)





とりあえず、美味しかった。
そんでさすがにもうお昼ごはんには行けないなと痛感した。


捻れ、繋がる、人 第五話
- 5 -

「どうして見せてくれなかったんですか!?」

何度目かになるメイデルクの質問に辟易しながら、私たちは帰途の
歩を進めていた。

「だから、何度も言ってるだろう。マナ抽出法は秘匿なんだってば。
教えるわけにはいかないし、見せるわけにもいかない。手に入った
ことだし、それでいいじゃないか・・・・・・」

「どうして秘匿なんですか。怪物の木を倒したのは僕ですよ。僕の
功績なくしては、マナを得ることは出来なかったわけですし、そう
なるとどう言ったって、僕らにもマナの全てを知る権利があるって
ものなんじゃないでしょうかね。ねぇ。そうですよね。トレイスも
そう思いますよね。うん。ほら、思うって言っているではありませ
んか!」

うんうん、と多少困惑気味ではあるもののトレイスが同調の意を見
せ、頷いている。

「何を言っても、駄目なものは駄目なんだって。はい、この話題は
お仕舞い」

っと、無理やり終わらせるやり取りが何度か繰り返されているので
正直イライラしている。

魔術の収束による、炎の鎮火と怪物の木の焼失とが、確認出来た後、
木によって遮られていた奥の道を通ると、拓けた広場のど真ん中に
神聖なまでに立派で、青々とした咲いたような葉を着飾り、どんな
嵐にも微動だにしないであろう樹幹をした、樹霊木こと『蝶の木』
が聳え立っていた。
蝶の木の周りには、色取りどりに色鮮やかな蝶が、神霊のように周
回し、羽を休めたそれは立派に咲き誇る見事な花のようで、しばし
魅入られるように眺めては、現世を忘れさせる至高の時間に酔いし
れた。

マナの抽出が終わったら、二人にも見せてやろう。
前の部屋で待機させた二人を思った。

マナの抽出方法は秘匿とされている。何故私がその方法を知ってい
るのかと問われると、知らなければ死んでいたから、だったり単な
る幸運だったりするのだが、詳細は割愛する。
ともあれ、その秘技を使いマナを瓶に封じ込めた後、二人にも蝶の
木の優美な姿を拝ませてあげ、瓶を渡して、仕事は終了となった。

まぁ、どの道二人だけでは帰ることなんて出来ようはずもないし、
家に帰るまでは何たらって小さい頃の言葉も、今更念頭になんてま
るでなかったが、さすがに、森で別れるなんて無責任なことは出来
ずに、同行を共に帰りの道を歩くと、予想通りマナについての質問
が間髪置かず発射されて来たというわけだ。

納得いかず不服そうなメイデルクは頭を掻いて、ブツブツと呟いて
付いて来ていた。

「それにしても大丈夫なのか?身体が完全に貫かれてたように見え
たんだが・・・・・・」

丸く破れた服に視線をやって訊ね返す。話題を変えるのが手っ取り
早い。

「えっ、あぁ、ええ。あれくらいの傷では何てことはないですよ。
魔術にて自然治癒を普通の人の数倍にも向上させることが可能です
からね。身体を貫かれようが、痛いことは痛いですが、すぐにでも
収まりますし。傷ついてもすぐに回復、すぐに回復、すぐに回復。
云わば不死身の肉体、っといっても過言ではないかもしれません。
それもこれも全て僕の絶大なる魔力が成せる業というヤツですよ」

得意満面で饒舌なメイデルクに、やっぱ先生はスゴイやっと相槌を
打つトレイス。
しかし、腑に落ちない。幾ら魔力が絶大であろうと、自然治癒の促
進が魔術を介さず行われる、なんてことはないはず・・・・・・
しかしあの時、メイデルクは魔術を発動させた形跡はなかった。
言葉に出してみるとメイデルクは返答をよこす。

「それはアレですよ。攻撃魔術と同時に展開していたんです。デュ
アルドローって言って結構難しい魔技術なんですけどね」

「先生。デュアルドローって何?」

トレイスが興味津々に割って入る。師の魔術を目の当たりにして、
改めて心酔しているような表情に見えた。

デュアルドローっていうのは・・・・・・っと高説し始める。
もしデュアルドローであったなら、メイデルクの魔技術は一流だ。
強力無比、しかも正確にビルドし火力が全体に均等に行き渡った炎
を具現した攻撃魔術、そして、身体を貫かれても完璧に癒してみせ
た回復補助魔術。その両方のロジックを、同時に且つ完璧に組める
魔術師などそうそういない。
それに・・・・・・

「先生はやっぱ凄いや!姉ちゃんも先生に惚れるはずだよねぇ」

私の横で大声をあげて感心しているトレイスに思考は中断された。

「早く持って帰ってあげましょう。このマナがあればまた暫らくは
大丈夫でしょうからね」

「・・・・・・彼女の病気の原因はわかってない?」

彼女本人に訊いたときは、原因と呼べるようなことは何も思い当た
らない、と言っていた。彼女自身が気付いていなくても、周りの人
間は意外といろんなことが見えているもの。最も傍にいるであろう
トレイスとメイデルクが何も心当たりがないようであれば、これだ
け奇異な事象なら、先天的に発症する因子を持っていた、っと診て
しかるべきである。

「えぇ。根本的な原因はわかってはいないんですよ。彼女と出会っ
た頃は、まだ病気には罹っていなかったんですけどね。一年以上は
昔になりますか。
僕は魔術の勉強のために、国立図書館に通っていた時期がありまし
てね。そこの司書をしていたのがルルアだったんです。
図書館の五十四階にある、本閲覧室の窓際、一番前から三番目の席
が僕の指定席でした。毎日そこで魔術書という魔術書を片っ端から
読み耽ってましたよ。朝から晩までです。
様々なジャンルの魔術書の中でも、歴史、体系、技術に関して管理
していたのがルルアで、僕はよくルルアに本の場所を訊いたりして
いたんです。
二週間ほどしたらルルアは僕の席に来て、後片付けをしてくれるよ
うになったんです。そして読み終わりそうになると、次の本を用意
してくれるようになりました。ルルアも魔術書が好きだった様で、
何冊か訊ねている内に僕の嗜好が分かってきたんでしょうね。
この本を読んだなら、参考文献、連作から類推して次はこの本だろ
うっていう風に、どんぴしゃで持ってきてくれるんです。
僕の図書館通いは益々楽しいものになってきました。
嬉しかったんですよ。僕の感性に入り込み過ぎるでもなく、逃げる
でもなく、そっと横からアドバイスをくれている感じが。
魔術本に関して意見を貰ったり、時には議論をしてみたり・・・・・・
そうです、そうです、ルルアは魔力の流れの方向が魔力の内部構造
に着目してみると魔粒子と物質中の電子が光子を吸収して運動エネ
ルギーへと自ら変化させることによって飛び出し、方向付けられる
と言うエィドュプリプトス理論を支持しているようなんですが、僕
は、かの有名な・・・・・・あれ、名前が出てこないですね・・・・・・ド忘れ
してしましましたが、如何せんそんなことはどうでも良いですよね。
つまり僕とルルアは魔術に関してもそうですし、また雑多で他愛も
ない話などもするようになっていったのです。
それで本当に毎日、図書館に赴きました。もちろんルルアが当番じゃ
ない日もあったんですけどね。そんな日は少し落ち込んだりもして、
夜を待たずに図書館を後にすることもありましたっけ。
それだけでも僕の中でルルアの存在が、魔術の勉強に影響を与える
ほどに、大きなものになってきていたことが分かります。
本を読みに行っているのか、ルルアに会いに行っているのか、どち
らの比重が大きいものになっていたのか。
認めてしまえば後者ですね。そして僕は理解しました。
ルルアのことが好きなのだということを。
その後、僕はルルアに告白して、快い心地よい返事を頂きました。
最初は良かったんです。いつもと変わらず、図書館で時間を過ごす
日々が続きました。以前にも増して、僕と一緒にいる時間が多くな
ったことで、仕事を怠っている、なんて司書長からお叱りを受けた
りもしていたようですが・・・・・・でも・・・・・・
それから暫くすると、ルルアは図書館を休みがちになってきました。
理由を訊いて見ると、何だか気分が優れないとのこと。
最初は風邪か何かだと思っていたのですが、医者に診せても、特に
風邪の兆候はないとのことでした。
体調が回復しても、またすぐに身体から力がまるっきり抜けるよう
に崩れてしまう。
体力が低下している、おそらく自律神経が弱くなっているのだろう
と思いまして、自律神経は不随意で自らのコントロール外、つまり
は魔力によって制御されていることから、潜在魔力に着目してみた
のです。
そうしてルルアの病気が何であるのか発覚しました。
体内の潜在魔力が消えてしまう。何の前触れもなく。
とりあえず、応急的な処置として、マナの服用。それが最も最善で
唯一の対処方法だと判明して、方々手を廻してマナを手に入れまし
た。しかし、マナはどうしたところで後手の対処方法です。
辛く苦しんでいるルルアの痛みを、少しでも和らげてあげることし
か出来ないのです。
治すために何をすべきなのか、どう調べるべきなのか、そして一体
僕は何が出来るのか、未だに判らないのです・・・・・・」

長広舌に語ったメイデルクは、不可解な症状に対する自らの不甲斐
なさを吐き出すように、溜息をつくと、懐からマナを取り出して、
かざして眺めた。
空は既に太陽を隠し、散りばめられた無数の星と、下弦に欠けた月
が、暗く深い漆黒の中を浮遊している。
瓶に詰められたマナが怪しく神妙に光っては消え、不定期なリズム
で惑わすようにまどろんでいた。

「姉ちゃんが出掛ける時には出来る限り、父さん、母さん、先生、
そして僕の内の誰かが居るようにする。姉ちゃんは姉ちゃんで嫌が
るんだ。私なんてほっといてもいいって、好き勝手に遊んでおいで
ってね。
きっと僕たちに迷惑をかけてるってすごく自己嫌悪してるんだと思
う。自分のことだけど、自分では何もわからなくって、それは誰にも
判らなくって、その為にも先生は魔術の勉強を、今も欠かさずやって
いるし、僕も魔術の勉強を始めたりして、少しづつ憶えていってるん
だ。
姉ちゃんは私がこんなことになってゴメンねって何度も何度も謝る
んだ。僕がいくら、大丈夫って言っても、ゴメンね、ゴメンねって
事ある毎にいつもね。
姉ちゃんは何も悪くない。謝る必要なんてまるでないのに―――」

苦虫を潰したような切ない苦渋の顔で、トレイスは声を沈ませてい
き、語尾は吐き出される前に暗闇の中へ溶けて消えた。

「――謝罪の言葉よりも、感謝の言葉の方が、言う本人も、言われ
た人間も、明るくなれると思う」

常日頃、私が感じ、思うことの一つだ。
トレイスは俯いた顔をあげ、私に振り仰いだ。

「うん、そう!その方がいいよ。姉ちゃんが今度謝ったら言ってや
ろっ!」

「あぁ、トレイス、君がありがとうって使うことでも、少しは伝わ
ると思う。使い続けてれば、いつしか心から思えるようになるしね」

うんうん、と両手を組んで顔を縦に振るトレイス。か細く不確かで
拠り所のない無慈悲な事態に置いて、言葉から心を変えていくのは
有効な自己暗示と言える。

「ガイドのお姉さん。ありがと」

その言葉が三人に微笑みを与えた。


帰りの道中、三人で下らない喋りを交えて、笑い声をあげた。
専らトレイスとメイデルクの笑い声が大きく、夜の空に染み渡るよ
うに流れた。


数時間後

そんな談笑を丸々食い散らかして嘲笑うかのように、町に戻った私
たちに、容赦のない展開がもたらされる。

「―――ルルアの意識が戻らないのよ!!!!!!」




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ウイルス注意報

撒き散らすぜ!



私の横の人と前の人が風邪にかかってしまいました。



どう考えても発端、病原体は私だろうと思う。
自分のせいで、辛い思いにあってしまったと考えると申し訳ない気持ち
ばっかりで、どうしようもない自己嫌悪に陥ってしまう。

存在しているだけで、些細な行動で、意図していなくても、誰かに
影響を与えるし、不幸にさせてしまう。

そのくせ、楽しい気分を味わわせることはない。
存在が行動が負を生むのなら、迷惑でしかないのなら、どこか、独りで。。。






楽しいことを振り撒けるような人間になりたいと思う。
そんな気持ちが、ほんの少しでも、ほんのすこーしでも
ブログで伝わればいいな。









あはははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははははははははははははは
何言ってるの(゚Д゚ )





なんて感傷的自虐的な気分を無理やり醸し出して、このまどろみ、
押し寄せる眠気に対抗できるかな、と本気で考えてみた壱無知です。
おはようございます!




んでもまぁ、風邪をうつしてしまったのは本当で、かなりの高熱が
出た模様。喉も未だに痛くて、声があまり出せていないようでした。
私も同様にノドは本調子じゃなく、声が低音を奏でております。



インフルエンザじゃあなかっただけ良かったのかもしれないけど、
罹らないほうがよっぽど良いわけで、TW内でもどこか風邪が蔓延
しているようなので、みなさん、手洗いウガイを忘れずに致しましょう。



これは本当に何度も何度も書いてることだけど、医学部出身者にきいた、
確かなソースなので。
1時間に1回のうがい。これでほぼ予防できます。
のどに違和感をおぼえたそこのお嬢さん、忘れずやりましょう。





TWでは3周年記念イベントをやっとこさやってみた。
ドロシーさんのクエで、お見舞いにいって報酬に箱をもらうというもの。
クエに必要なものは
・普通の花束x3
・ロイヤルゼリーx3
・正体不明の酒x3

箱からは、3周年記念ティアラ 本物orレプリカ、ゴミが貰える模様。






早速やってみる。






お見舞いを完了する。





箱を開ける。







マナP(大)








    (´Д⊂






待て。自分の小説の中で、あんなに貴重なものだと強調したじゃないか。
そうだ。これは幸運のプレゼントだ。
マナなんて希少価値の高いものがあたったんだ。
やった!やった!やったよ!やったんだよ~!







(´-ω-`)うん。わかってる。君が言いたいことは。







逡巡すること数分。二回目をやる。
材料は余分に手に入れていたため、数分で完了。








箱を手に取る。








恐る恐るリボンを解く。





蓋の側面に爪をいれ、ゆっくりと開ける。








マナP(大)









( ´∀`)




ウソです。ごめんなさい!
そこには光るニセモノが入っておりました。
レプリカだと命中3がついていないのだけれど、
まぁどっちみち実用的じゃないからいいです。はい。




3周年記念なのに、こんなアイテムでいぃn(ゴホッゴッ





さて、そういえば、そろそろラブイベントで手に入れた、
ラブプレゼントも開けないとなぁ……






何かいいもの入ってるかな♪
もももチャプター日記 その1の続き
ネコさんを探そう♪



ミラお姉さんと町の探検中に、ネコさんを探して欲しいって依頼を
されちゃいました。



ネコさんは大好きだし、冒険中に見つけられるかもしれないから、
乗り気じゃないミラお姉さんの代わりに探してあげることに!




町のお店の人たちに訊いて見ると、いろいろ頼みごとをされて
ゼリクリやキノコやら採りに町の外にも行ってみた♪



頼まれたアイテムは結構簡単にあつまっちゃったから、ネコさん情報と
引き換えにいろいろ教えてもらって、何とかネコさんを発見!!



ミラお姉さんはお友達さんと遊んでて、とっても仲がいいなぁって
思った。
お姉さんともっと仲良くなりたいな。(・∀・)人(・∀・)



TWCI_2007_2_26_21_17_9t.jpg



ももと一緒で、ネコさんを探してる人が居て、その人はネコさんに
ミルクをあげようとしていたみたい。
会えなかったけど、きっとその人もネコさんが好きなんだ。
動物好きな人に悪い人はいないっていうよね。うんうん。(*  ̄▽ ̄)




TWCI_2007_2_26_21_3_34t.jpg





シュワおじさんのところに戻ると、新しく、ゼリーキングってのを
倒して、なんちゃらの証を取ってきて欲しいみたいなお願いをされた;



いろんな人たちと競争だったけど、ミラお姉さんが頑張って、退治
してくれて、やっぱりカッコ良かった(*´д`*)
お姉さんのお友達さんが落としていったキラキラ光る宝石は
ももがまだ持ってるけど、いいのかなぁ???


TWCI_2007_2_26_21_39_28t.jpg





お姉さんのお友達さんは、お姉さんのためにと思ってやってることが、
少し不器用でうまくお姉さんに伝わってないみたい。
なんだか好きな子にチョッカイ出したり悪戯する小さな子供みたいだなぁ
思ったw

伝えたいことが言葉や形、行動、結果、いろーーーんなことから、
うまくちゃんと伝わればいいのにね。


捻れ、繋がる、人 第四話
- 4 -

一見するとただの木。
しかし、明らかに自然の木とは異なるところが存在する。
幹に刻々と刻まれたように、鋭い目をした巨大な顔がある。
まるで童話にでも出てくる博学な森の長老と言った感じなのだが、
醸し出している雰囲気は、長老のような朗らかで和やかなものでは
なく、殺伐と陰気なもので、決して話しかけようなどとは思えない
迫力があった。
葉のボリュームで正確には分からないが、樹高はおよそ十五メート
ルと言ったところだろうか、目通りは七メートルほど。
怪物の木としては大きくもなく、小さくもなく、平均的な大きさで
ある。

「『怪物の木』か・・・・・・やっかいだな・・・・・・」

「もしかして、あれ、魔物なのかい?」

溜息と同時に漏らした呟きに、メイデルクが反応した。怪物の木に
ついては知らないようで、マジマジと目を凝らしては細部まで観察
している。

「あぁ。蝶の木の森にしか生息しないが列記とした魔物だ」

「・・・・・・強いの?」

トレイスも怪物の木から目を離さず、動かないただの木の所作を見
逃すましと一心に様子を伺いながら、訊いて来る。

「枝、根の全てが武器と考えれば容易に想像は付くと思おう。つま
り狙われれば、雨あられの如く攻撃が降り注いでくるってわけ。
尚且つ、こちらが攻撃を加えたところで、多少の傷なら、自己再生
ですぐに治るし、木といえど、あのデカサ。そんなに簡単には大ダ
メージを与えることは出来ない。攻撃を当てることは容易でも、生
半可な威力だと、倒す前に、反撃喰らってこっちがやられる。
体積のデカイことで生じる隙、つまり懐への侵入は、枝や根によっ
て攻撃兼防御も併せ持った武器に阻まれるやっかいなヤツ」

んーっと呻いたトレイスは、どうしましょう?とメイデルクの方に
視線を向けた。

「―――大火力での一点攻撃」

メイデルクを差し置いて私が答える。

「二人はここで待ってて。コレ使って何とかやってみるから」

ウエストポーチからさらっとコブシ大の小型爆弾を取り出して、二
人に見せと、おぉっと驚嘆の声を頂いた。
いつもなら、怪物の木相手に狩ろうなんて考えはせずに、反応と間
合いを意識しながら、距離を保って、スルーするところなのだが、
今回はそうはいかない。

「まさか事も無げに爆弾を取り出して見せるなんて」

「常備してるからね」

引き攣った顔のメイデルクは、汗が流れたかのように、片手で額を
拭う仕草をみせ、ガイドさんには逆らわないほうがいいですね、と
トレイスに溢していた。

「じゃあ、ここで待機しといて。動かないようにね」

片手でステイの合図を送りながら、釘を刺して、いざ一歩踏み出し、
部屋の中に身体を置いた。

緩慢に歩を進めて、じっくりゆっくりと間合いを確認しながら、樹
高からの枝の有効範囲を探ると同時に、地面にも気を張っておく。
枝の攻撃は、目視出来るし、反応も出来るが、根は土の中なため、
どうしても気を付けて置かないと、強襲を漏れなく貰うことになる。
出来うる限り近づいて、爆弾の爆発威力を最大限に引き出せるポイ
ントに放り込まなければならない。
もう少し大きい爆弾を持っていれば、そこまでする必要はないのだ
が、常備し、持ち運びに便利で手頃なサイズ、伴う威力を材料にす
ると、この小型爆弾以外に選択肢が及ばなかったというのが実情だ。

鋭く尖った両目が私の身体を射貫かんばかりに、こちらを向いてい
るが、まるで眼中に入っていないのか、それとも目を開けながら寝
ていたりするのか、わかっていて攻撃のチャンスを狙っているのか
判別が付かないが、いつ先制打を出してくるか見当が付かない。

にじり寄る足が石にコツンっと阻まれる。

その瞬間、木に宿った顔が変化を見せ、口の端を持ち上げると、
気味悪くニヒルな笑顔に変わり、うおぉぉおんと空気を震わすよう
に唸った。
足先を見ると、ポツンと地面に転がっている石かと思ったそれが、
突如うねり踊りだした。
石ではなく、根につまづいたのだ。
外敵の接近を検知するための罠が仕掛けられていたのか。
っと感心している場合ではない。地面から顔を覗かせていた根が、
勢いよく地面から生え出してくる。
まるでミサイルでも発射されたかのように、直線上に隆起していく
地面が、私の方へ突き進んできた。
確認できる余裕はある。
私は根から遠ざかるように、しかし木には近づいていくべく斜めに
走り始め、爆弾を右手で握りこむ。
根が塔のように突き出して、クネクネとまるでそれ自体に意識があ
るかのようにうねると、連鎖してそこら中から根が突きあがってき
た。
本体への行く手を阻むように、幾本もの根がゆらゆらと蠢いている。

爆弾を投げるにはまだ着弾点の見極めが出来ていない。
―――もう少し近づかないと。

横方向の根の先端が、見定めるように私に向くと、ピクっと微細動
して一気に加速し、迫ってきた。
機敏に感知し、後方へ身体をずらすと、すかさず目の前を根が通り
過ぎ、風切り音が耳と心を冷たくさせ、次いで訪れた時間差の風が、
身体全体を冷やした。
ピタッと動きを止めた目の前の水平に伸びた根に手を付いて、すか
さずくぐる。地面を見ると、うっすらとだが円形の影が所在無げに
揺らめいて見えると、急に幅を広めて私の影と重なる。

――!

上空から私の方へ突き刺さってきたもう一本の根を寸でのところで
身体を転がせて避けた。根は地面に突き刺さり、めり込んでいく。
突き出て刺さり、輪のようになった根を横目に、視線をあげ、同時
に前傾姿勢のまま身体を起こして走り始める。
四方に目を走らせて、次々と襲い掛かってくる根を避け、本体に近
づいていく。

すると根に加えて、枝までも容赦なく突っ込んできた。
怪物の木の全攻撃有効射程距離内に入ってしまっているようだ。

四方八方縦横無尽に襲い掛かってくる攻撃を避け、神経は研ぎ澄ま
され、集中力が増していく中で、全方位からの攻撃、右手には爆弾
という状況から「こんなこと前にもあったな」等と冷静に思い出し
ている私が居る。
あの頃の経験が少し今に活きていることが憎らしく、苦笑した。

魔物といっても木には変わりなく、木には主脈という大きな支えと
もいうべき一つの流れを司る大黒柱が存在する。その主脈と二本の
側脈で構成された三行脈という形状なのが、この怪物の木の原型だ。
薄汚れていても綿密でキメ細かい木肌が、主脈を浮き上がらせてい
る。

指を巧みに、爆弾の安全装置を抜き、狙いを主脈に定める。
左前方からの鋭い枝が顔面を狙ってくるも、身体の重心をずらして
避けるが、そのために投げるタイミングをもずれる。

―――チッ

軽く毒づく気持ちを舌打ちにし、それでもバランスが完全に崩れて
しまう前に、爆弾を主脈目掛けて投げた。

柱のように聳える根と、網のようにはった枝と枝の間をすり抜けて
コツンっと幹に接触。次の瞬間。

―――爆発!

爆音が耳に届いたすぐ後に、追いかけるように爆風が焦がした葉を
取り込んで顔に吹き付けてくる。
根は太陽を見失ったヒマワリのように萎れ項垂れ、葉は宙に舞い、
枯葉の山にダイブしたときのような聴き触りの良い音が、煙の中か
ら聴こえて来る。

目標とした着弾点に投げ込むことは成功した。
後は爆発力が本体を破壊するに足る威力があったかどうかだ。
中途半端に攻撃しても、すぐに自己再生が走り、爆弾の無駄なんて
結果になりかねない。
それこそ根こそぎ持って行く火力が必要というわけだ。

怪物の木を丸ごと包んでいた煙が上空の葉に吸収され、みるみる薄
まっていくと、巨木の姿が徐々に顕になっていく。
完全に破壊出来ていないか、と毒づいた瞬間、煙を裂くように一筋
の道が走った。

―――反撃かっ!

それは怪物の木より放たれた、枝による攻撃だ。
しかし、目標を捉え切れていない、出鱈目で闇雲な攻撃で、まるで
見当違いの方向へ枝が伸びていく。

当たることはないっと一息吐いて気を落ち着かせようとした。

が、


「――先生!!!!」

後方から、トレイスの甲高い叫び声が部屋に轟く。瞬時に先ほどの
枝の先端を目で追うように視線を後方へ移動させる。

―――!?

枝の向かう先にメイデルクが立っている。何故あんなところに!?
目を閉じてぶつぶつ何事か独り言を唱えているが、まるで聴こえは
しないし、トレイスの呼び掛けにも反応を見せない。

「メイデ・・・・・・・・・!!」

トレイスと同様に呼びかけようとする前に、一本の軌跡を描いた鋭
く強靭な枝がメイデルクに到達する。
メイデルクの右肩に極度の衝撃が加わり、枝は身体を貫いて血と共
に背中から突き出した。
衝撃に逆らいきれるわけもなく、メイデルクはなす術なしに、後方
へ弾かれる。
メイデルクの身体が浮き、まるで人形のように力なく放物線を描い
て吹き飛ぶと、そのまま地面に叩きつけられ、砂煙が舞い上がり、
静かに霧散する。

「先生!」

トレイスがもう一度叫んで、すぐさまメイデルクへ駆け寄った。
慌てて私も走る。

先生、先生っと連呼するトレイスの声が部屋に響き、切迫し、冷た
く重たい雰囲気が声のトーンを狂わせて行く。
涙声。

辿り着いた私もメイデルクの容態が深刻であることが、一目瞭然で
理解出来た。
右肩からの出血がおびただしい。服はおろか、倒れている地面一帯
に血溜りが出来ている。
仰向けに倒れたメイデルクの目はこれでもかというほどに力一杯、
見開かれていた。
メイデ・・・っと私が呼ぶのをまたも遮られる。

メイデルクによって―――

ゆっくりと、弱弱しく、たどたどしく、不器用に、メイデルクは左
手を挙げ始めた。
葉に遮断されて薄れてしか見えない空に向かって、まるで太陽でも
掴み取ろうとしているかのように、震えながら、開いた手を垂直に
伸ばす。

「せん・・・せい・・・・・・」

怪訝に呼びかける言葉が彷徨ったようなトレイスは、伸ばされた手
をじっと見つめ、その先へと視線を漂わせた。

――何を探している。

問い掛けを無視するように、そう、まるで答えごと潰すように、
メイデルクはかざした左手を握りこんだ。

―――――!!!!!


呼応するように、引き金であったかのように、呼び覚まされたかの
ように、爆音が響く。

振り返ると怪物の木を丸ごと飲み込むほど巨大な炎が、荒れ狂う木
に取り付くように燃え盛り、唸りをあげていた。
蒼く灼熱に轟々と燃え、まるで歳枯れた動きで老翁なダンスでもし
ているかのような木が、枝葉を吹き上げ、幹全体の色を黒く変色さ
せていく。
乾いた葉が燃え散り、爆ぜる音が断続的に鳴っては、時折豪快に木
の軋みと割れる音に彩りを加えたような、軽快でリズミカルな音楽
を奏でていた。

巨大過ぎる炎の熱気が痛いほどに肌を照り付ける。
蒼く揺らぐ炎は、空気と可燃性の気体が一定の比率で混じり、炎の
全体に酸素が十二分に行き渡っている証拠で、それ故に強力且つ高
温に燃え上がっている。
蒼い炎。完全に制御された魔術。
まさしく教科書通り、お手本ともいうべき見事なまでのロジックと
イメージ、発動のための魔力も備えた、素晴らしい魔術と言える。
怪物の木を飲み込んだ蒼い炎は、見蕩れるほどに美しく、視線を惹
きつけ、それすら取り込むように挑発的で誘うような揺らぎを魅せ
る。
蒼黒くひしゃげるように姿を変えていく怪物の木から、最後の足掻
き、否、寧ろ嘆きともいうべき高音で騒音な破裂音が響いた。

「・・・・・・決まりました・・・かな・・・・・・」

恐る恐るといった調子ではあるが、自信のこもった声が聴こえた。
声のした方へ顔を戻すと、満足そうな笑顔を浮かべるメイデルクが
身体を起こそうとしているところだった。

先生!とトレイスが歓声をあげ、上半身を起こすメイデルクを補助
する。

「動くな!じっとしていろ。相当な傷と出血のはず。無闇に身体を
動かしたりしたら傷口を拡げるだけだ。死ぬぞ!」

慌てて身体を強張らせたトレイスに対して、当のメイデルクは、何
ら動作に変わるところなく、大丈夫、大丈夫と繰り返した。

「心配は要りません。傷は既に塞がっていますから」

「何だって・・・・・・!?」

メイデルクは右肩付近の破れた服の穴を広げてみせると、確かに貫
通したはずの皮膚、肉体が全くの跡形もなく元通りになっていた。
右手を開いたり閉じたりして、神経の繋がり、指先までの肉体感覚
と電気信号とを確認しているかのようで、傍から見ても、正常なそ
れである。

ね?大丈夫でしょう?とニッコリ微笑まれると、まるで先ほどまで
の一連の流れがウソか夢か幻覚かと、疑いたくなるほどに、眉根を
寄せるしか出来なかった。

――魔術による肉体再生自己回復

何時の間に。

トレイスが大丈夫なんだねっと喜びと感嘆に叫び、グッと時代錯誤
に親指を立てるメイデルク。

背中に押し付け打ち寄せる熱が和らいできた。
燃え尽き、収束していく様を最後まで眺めていた。
綺麗で儚く一切を無情に孤高に鋭く強く燃えた炎を。




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エピソード2実装

諸君はすでに体験されただろうか。



新しく改変されたあの世界を。



新しく追加されたあの人物を。



新しいこと、それはすなわち未知。
勝手知ったる普通で平常で平凡なことから解き放たれて、未開の領域を
探索し、発見し、喜ぶということ。



新鮮な息吹を肌で感じ、好奇心にあおられ、wktkして進むということ。



そう。遂に実装された

エピソォォォォォォォォォド トゥゥゥゥゥヽ(`Д´)ノ





トゥトゥー♪トゥトゥトゥトゥートゥ♪
トゥトゥトゥトゥートゥ♪トゥトゥトゥトゥー♪
((注)スターウォーズな感じ)





ほっとんど実感は出来なかった!!!(ぁ



とりあえず、ミラでINしなかったので…



でもやっぱりある程度の変化は見てとれて、一番大きいのがどう考えても
ヨシュアが町をうろついていること。
なんだか歩き方、走り方がぎこちない感じに思うのだが、きっと単に
見慣れていないからだろうと思う。




さてそれから、他プレイヤーにかかっている補助の効果が一目瞭然に。
これまでの外的変化(頭の上に△とか)で判断し、重複でかかっていると
わかりにくかったものが、名前欄の下側にざっと表示されるように
なっておりました。(画像貼れよ)



これはMobも同じなのかなぁ……狩りに出てないのでその辺は不明。



狩りに関してはPOTディレイが全地域(?)で実装となったようで、
これまでPOTがぶ飲み~♪がぶ飲み~♪がぶ飲み~♪ォゥィェイ♪
で狩ってた人は出来なくなって、相当な不便を感じてそうな
気がする。




テチはあんまり関係なく…むしろ需要が増えるのかな。



その他の変更点は……




まだ知りませんねんアハハ




ナヤはどうやら大して強くなっていない模様。
元が元だけにもっと調整してよかったのかも。
調整第一弾ということっぽかったから、これからも他キャラなど
調整されていくのかな。




今日、早く帰れたら、狩場に出てみようかな。




シャルン狙いたいけど、わざわざ面倒なので、やめておいて……
雪板行って見ようか、ぬーーーーん!
いらない詳細

結局エピソード2の開幕日はインせず。



終わってないかもしれないけど事の顛末記述。




1週間か2週間前くらいから喉が痛くなり始めて、それがずっと続いていた。
波があったけどどこか違和感はずっと付き纏っていた。



27日火曜も午前中はいつもと変わらず大して変化はなし。
でも何が切っ掛けで何が発端で何が引き金だったのか、
突如として肩の重さ、鈍さが感じられはじめ、伸ばしても一向に
回復せず、その鈍重さは増すばかり。


遂に上半身全般に伝播して、頭、顔、首らへんの体温がどう考えても
高くなっていることを自覚。




ヤヴァイと思い始める。



ずっと同じ姿勢でほとんど身動きひとつせずに2時間が経過。
立ち上がろうとする気力もなく、ただただじっとぐっと耐え続けた。
それは時間との忍耐勝負。
時間とにらめっこしていると、その過ぎ行く体感速度があまりにも
遅いことにいらつく。




早く過ぎろ、早く過ぎろ、早く過ぎろ。



翌日は休もうと80%決意し、やっと定時を向かえた折、同じチームの
人に明日休むかもしれません、っと一言置いて立ち去る。




基本的に仕事には余裕があり、大体いつも暇なんだけど、金曜までに
仕上げなきゃいけない画面があって、もうそれは木曜1日で仕上げて、
金曜テストというノリで行くしかないと思った。

今日、来てみると、その画面の仕様は出来てなくて、尚且つ担当者も
元画面の人に託すかもみたいな話になっていて、私の仕事は今、何も
なくなり、安堵。



さて、帰ってから昨日の記事通り、病院行って、検査して、
2800円取られて、帰ってゴハン食べて薬飲んで横なって、頭熱く
痛く、身体全体もギシギシな状態で一晩過ごす。
睡眠時間はそれほどなかったような気がする。



午前4時くらいでもあんまり改善してなくって、やっぱりこりゃダメだ。
っと思ったんだけど……




午前7時、目が覚めると、熱はひいていた。




その3時間の間に身体の治癒能力がフル活動していたようで、
相当回復していた。



んでも、とりあえず仕事は休んで、そのままゆっくりする。



身体が重いのはあんまり変わってなかった。
お昼、すごくお腹がすく。




まるで消費して足らない栄養を欲しているようで、食欲は漲っていた。
それでもとりあえず買いに行くことはせずに冷凍の焼き飯を食べる。




それから先も布団の中でゴロゴロ過ごす。



結局一日中ゴロゴロして、夜は不規則な睡眠だったためか、
3時くらいまで寝られず、逆にこれはヤヴァイと思い始めた。



今のところ睡眠不足って感じはないけど、お昼食べたらどうなることか。




久々に高熱だして、さすがの馬鹿でも風邪と認識できるくらいきつかった
けど、今ではほぼ回復。
まだ予断は許さない可能性もあるけど、高熱で辛い状況が半日で終わった
ことは本当に良かった。




これまで数日に渡って高熱にうなされたことってのがないので、
結構内部の治療機能は高性能だと自負。




常日頃言っているウガイ。



危険な兆候のときは念入りにやっぱりしないとね。



簡単なことの持続が一番難しかったりするのだよね…



風邪、インフルエンザまだまだ流行っているようなので、
みなさんもご注意を。



全てにおいて予防が一番大事!




最後に御礼。メールくれた方ありがとう。(TдT)

今日からエピソードツーだっ♪
捻れ、繋がる、人 第三話
- 3 -

『蝶の木の森』までの道中、何度この男の口を塞いでやろうかと
思った程、他愛もないことを延々とよく喋った。
第一印象からの変化と言えば、より一層悪い方へと上塗りされてい
くだけで、良いところを挙げなさい、なんてテストがあったなら、
0点獲得確実である。

ただ、このマナ採取はトレイスの姉――ルルアのためであること、
メイデルクがルルアの恋人であること、症状は緩和されておらず、
手持ちのマナが少量になってきたこともあり、どうにか工面出来る
お金で今回の依頼をしていること、トレイスは魔術を勉強して、姉
の助けになりたいのだということなど、経緯を熱く語っていた彼か
らは憎めない性格なのだということは理解出来た。


舗装された道は馬車を利用し、途中クラドで一時休憩を取って、そ
こからは馬で進むのは困難なため、歩いて目的地へと向かった。
徒歩で森の中を散策し、多少湿った空気と、一面に生い茂る樹が、
森林独特の匂いを散布し、高音な鳴き声がどこからともなく響き、
無秩序に伸びた蔓や枝など自然の障害に行く手を防がれ、魔物を
発見したら回り道して戦闘は避け、一時間は道なき道を歩いた。
木漏れ日とは言えないくらいの射光が、疲労に刺さり、水分補給を
しても止め処なく流れ落ちていく汗が疎ましく、森林からのマイナ
スイオンなどお構いなしに、溜息を一つ吐く。

ようやく蝶の木の近くに到着した。

「ここから先に行く前に、この薬を飲んで欲しい」

懐から、三本の小瓶を取り出して、両者に渡す。
無色透明で見た目はただの水、なのだが、薬と称したそれは、幻覚
中和剤である。
『蝶の木の森』には幻覚を引き起こす毒性のある花粉が、空気中を
淀み漂よい散布されている。人間を近づけないための蝶の木の防衛
対策なのかは定かではないが、この花粉を体内に取り込むと、幻覚
を見るようになり、現在位置や目的方向が判断識別出来なくなって
しまう。空間把握に障害が発生するために、滅多なことでは進むこ
とは出来ず、また木に近づけば近づくほどに、散布量は増していく
ので、体内吸入からの幻覚異常の度合いは深刻に深まり、無作為に
彷徨っていると思っても、実際には自然と毒性の薄い方へと逃れ歩
いている、といった具合に排斥機能を備えたある種の結界みたいな
ものなのである。

そういったことを説明すると、二人とも文句も言わずに薬を飲んだ。
これでしばらくの間は毒素にやられる心配はない。
効力はおよそ二時間。マナを手に入れる前には、辞去出来る充分な
時間だ。

じゃあ行こう、っと私が先頭に立って、後ろ二人を付き従える形で
足を踏み込んだ。


樹木の嵩が増し、日差しを遮っているため、風が冷たく感じる。
鉄の壁に身体をすり寄せた時の、ひんやりと内側から冷やしてくる
かのような肌寒さと、一歩踏み込んだ時から一線を画した境界を潜
ったかのような異質な違和感に、突如立ち込め覆ってきた満面の霧
が、身体全体をぼかして、一瞬にしておどろおどろしい感覚へと誘
われる。
不可視がアクセントに恐怖を連れてくると、急激に気温の低下を感
じ、腕には鳥肌が几帳面に並び立っている。
振り返ると、トレイスは緊張と恐怖の混じった、情けない顔色へと
変貌してしまっているし、腰は引けて満足に歩けているのか心配に
なるような足運びで、何とか付いて来ている状態。
それに引き換え、メイデルクはうわっ、何だか寒いですねー、と間
の抜けたというよりは普段とまるで変化のない口調でキョロキョロ
と辺りを見回しては、誰にともなく喋っている。
なかなか大した精神力と言えるのか、はたまた単純な鈍感と言える
のかは、不明として置こう。

「ちゃんと付いて来て。霧も濃いし、魔力による内面的圧力も強く
なって来る。一歩足が竦んで歩調を乱したら、あっという間に置い
てけぼり喰らうことになるからね」

そうたしなめてみると、慌てたようにトレイスがぴったりと私の後
ろに張り付くように足を速め、メイデルクは「はいはい」と軽やか
にステップを踏んだ。

「・・・・・・お姉さん・・・・・・身体が思うように動かなくなってきてる気
がするんだけど・・・・・・」

恐る恐るトレイスが舌も回り難くなっているような、たどたどしさ
で声を出した。

「それが魔力の抑止力ってやつ。強大な魔力へ近づくほどに、体内
の魔力が反応をして、大きい方へ引き寄せられてしまう現象。
まぁ万有引力の法則みたいなもので、魔力と魔力も引力があって、
互いに纏まろう、引っ付き合おうとする力が存在するから、その引
力で動こうとする魔力が身体っていう箱からもがこうとすると、身
体側では出て行かないように対抗する。そのせめぎ合いが肉体活動
に影響して、スムーズに身体が動かせなくなるってわけ。
内に秘める潜在魔力が強いものほど、辛いだろうね。これからどん
どん強くなっていくから頑張って付いて来なよ」

心細い信用な肯きを無言で返すトレイス。
もしも二人と逸れたりしたら、非常に危険だ。この森の全体像、目
的地への座標などは自分の頭の中にしか入っていない。
圧力の少ない方へ歩いていけば、森から抜けられるって言うのと、
幻覚症状が発症すれば、これもまた毒素の薄い方へと自然と誘導さ
れるという、森自体の防護排斥システムが二人を外へ導いてくれる
が、しかしながら魔力に惹かれた魔物と遭遇するという危険は常に
孕んでいるのだ。

「それで、ガイドさん。目的地はもうすぐなのですかな?結構歩い
て足が疲れ始めてきてしまったますよ。普段あまり身体を動かして
いないからってのが大きいんでしょうね。特に足の裏が痛いんです
よ。裏が」

魔力なんてことはどこ吹く風、全く意にも介さないメイデルクが、
不満の声を挙げる。

「誰も無理言って付いて来て欲しいなんて言ってないし、寧ろゆっ
くり待ってりゃ良かったのに・・・・・・とりあえず目的地はもうすぐそ
こ、すぐ開けたところに出るから」

「そうですか。これも鍛錬だと思えば、已む無し。トレイスにとっ
ても良い修行になっているでしょう。四時間ほどは歩いているよう
な気がしますよ」

「そういえばこれって同じ道を帰らないといけないのかぁ」

全体の道程の半分にも達していないという事実は、トレイスの足を
より重いものにしただろうことが、沈んだ顔から読み取れる。

「暗くなったら森は危険だから、行きよりも慎重に戻らないといけ
ない。恐らく帰りは行きよりも時間がかかると思う。安全だと判断
した場所で都度、休憩は入れていくけど」

「日が沈むまで、あと二、三時間ってところでしょうかね。となる
と、町に着くのは十中八九夜中ですか。ホントに・・・・・・帰ることを
考えると憂鬱ですね」

憂鬱を吹っ切りたいのか、手を組んだ状態で腕を真上に伸ばし、腕、
肩にかけて筋肉を伸ばすメイデルクは、同時に大きく欠伸をして、
んーっと唸った。

「姉ちゃん、大丈夫かな・・・・・・症状が出てなければ良いけど・・・」

「早く帰ってマナを見せ付けてやりましょう。きっと喜んでくれま
す。足に鞭打って、苦労しただけの甲斐はあるはずですよ。彼女の
笑顔が疲労なんて、すっ飛ばしてくれるでしょうしね。もしかした
ら、笑顔どころか鬼の形相で怒られるって可能性も充分予測出来る
事態ですがね」

「姉ちゃん怒らすと怖いからなぁ・・・・・・」

「女性が怒った場合はギャップが激しいですからね。普段からは想
像も出来ないような喋り方で、矢継ぎ早どころか、マシンガン継ぎ
早と言って然るべきほどの速射性で口撃してきますからね。
男の外面は比較的女性よりも頑強と言っていいとしても、内面は
撃たれ弱い連中が多いですから。畳み掛けられてノックダウン。
ダンマリを決め込むか、逃げおおせるか、ここぞとばかりに放たれ
る非情な必殺武器の『涙』なんて出された時には、為す術なし。
ほとほと参りますよ――」

「――僕も先生も弱いかも」

姉の話題であることも幸いしてか、硬かった表情にゆとりが出来て
多少歪ながらもトレイスは笑った。

「いえいえ。僕の足は今、相当弱ってますが、心は弱くありません
よ?自己分析ですがね。魔術師は精神コントロールが出来なければ
いけませんからね。ホントそれにしても、僕の足のげんかい―――」

「――――――着いた」

メイデルクの小言を制して、静かに呟く。吐き出そうとした言葉を
飲み込んで、んぐっと詰まったように動きも止めたメイデルクに合
わせてトレイスも歩みを止め、お面を即座に付け替えたように真剣
な表情に早代わり。

ここからは、より慎重に行動しなければいけない。何故なら、蝶の
木の魔力に引き寄せられた魔物が居る可能性が高いからだ。そして
魔物といえど抑止力が行動を抑制しようとするため、本当に集まる
のは身体の対抗に打ち勝つほど強力な潜在魔力を持ったモノ、とい
うことになる。

前方には岩壁。行き止まりかと思えるほど、おびただしく這い生える
木の枝が、外界からの侵入をシャットアウトするように、岩壁の隙間
を縫うように密生している。

動物の鳴き声も聴こえない静かで聖櫃に似た物言わぬ威圧感。

押し潰されそうな雰囲気に滑り込ませるように、私は静かに言葉を
紡ぐ。

「―――ここまでは、魔物から極力逃げてこれたけど、この先に関
しては一つの部屋だと思ってもらっていい。だから回り道なんて出
来ないし、もし魔物が居た場合はそいつを狩る必要が出てくる。
とりあえずは中の様子を見てみて、行動を決めようと思う」

コクリと頷く二人。その様子を確認してから、壁に向かって一歩前
に踏み出すと、落ちている小枝を踏みつけてしまう。
ポキッと乾いた音が、私の鼓動を若干早く打ちつけて来て、落ち着
けようと眼を閉じ一拍置いてから、壁のように群がる枝を掻き分け
て、ゆっくりと木々で覆われた視界に隙間をあけていく。

豊かで頑強に成長した枝に苦戦を強いられるも、徐々に向こう側の
様子が分かる程度の薄さにはなってきた。何重にもなった枝を一つ
一つ剥して行き、知恵の輪を無理やり外すように、入り組んだ形を
気にせずに作業する。
男二人の手伝いも加わり、数分後。

視界が開ける。


広場。という言葉が一番しっくりくるであろう。広さにするとおよ
そ五十平方メートルといったところ。岩で囲まれた、正しく岩壁の
部屋で、生えている樹の高さもこれまで歩いて来て、眺めてきた木
とは一線を画すほどの育ち方をしていて、美しいまでに艶やかな渋
緑の色合いが空間を包み込むようにして、不思議な重量と重圧が、
身体全体に掛かってくる。
日差しは生い茂る葉に遮断されているが、完全に光を反射してしま
っているのではなく、折り重なる緑を透過して、力強く部屋内を照
らしている。まるで屋根の役割をしているかのようで、これならば
きっと雨であっても濡れることはなさそうだ。
部屋といっても行き止まりではなく、現在位置の対面には一本道が
続いている。

―――はずだ

今は見えない。真正面には行方を遮るかのように、もしくはマナの
番人であるかのように、巨木が鎮座している。

『怪物の木』

その魔物はそう呼ばれている。




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